はじめに

巨額のベンチャー投資を進めている中国の実態

「ああ、やっぱりここまで格差が広がっているんだな」と、ため息をつきたくなるニュースが報道されました。新聞によれば中国のベンチャービジネスへの今年の投資額が現時点で3兆円となり、昨年を大幅に上回って過去最大となったそうです。

中でも4600億円と大型の調達をしたのが、滴滴(ディーディー)という中国企業ですが、これは中国のUberと呼ばれる配車サービスのベンチャー企業で、中国の大手生保からの投資以外にアメリカのAppleからも出資を受けています。

リストを見ると同額の4600億円を調達したもう1社の企業として、アリババ傘下の金融会社の名前が挙がっています。日本でも楽天市場と楽天カードが収益の両輪となっているように、中国で最大シェアを誇るEコマース集団のアリババも金融ビジネスに力をいれていくのでしょう。

金融と技術を組み合わせたFinTech(フィンテック)が注目される中で、アリババが4600億円を調達したということは、我が国を含めたアジアの金融の競争地図を変える可能性があるという点で、興味深い動きだと思います。


日本のベンチャー投資はわずか1300億円

さて、冒頭で私がため息をついたのは、中国でこのようにベンチャー企業が巨額の投資を受けて成長を狙う一方で、同時期の日本のベンチャー投資の規模が併記されていたからです。

その金額ですが、わずか1300億円。これは日本中のベンチャー企業への投資額を全部合計した金額です。それがディーディーやアリババの調達金額の3分の1にしかならない。中国のスポーツ番組のコンテンツを手掛けるベンチャー企業1社分の調達額と日本全体の金額が同じというレベルです。

日本でも同じ領域の事業機会について注目されている最中であるにもかかわらず、ベンチャー企業への投資額がこの数字というのが驚きです。日本でもFinTechは金融事業者各社が注目している事業機会ですし、AbemaTVやHuluなど動画コンテンツの配信事業もベンチャーとしての注目株。しかし1300億円の投資規模でどうやって世界の競合と戦うのでしょう?

アメリカ対中国の競争の構図に埋もれる日本経済を予感

動画コンテンツの黒船と呼ばれるNetflixが、吉本興業から『火花』の映像化権を獲得して独自のドラマを制作したニュースがありましたが、その資金源はアメリカの投資家がアメリカのベンチャーであるNetflixへと投資した資金です。

アメリカが今年、ベンチャー企業へと投資をした金額は合計すると7.1兆円。ふりかえってみれば、Web、スマホ、そしてFinTechという成長領域は、日本ではすべてアメリカのハイテク企業に制覇されてしまっています。

日本にもCYBERDYNE(サイバーダイン)のような人間を補助するロボットのような有望なベンチャーはあるのですが、ここまでの規模の投資は受けられていません。Uberやディーディーのような配車ビジネスはタクシー業界の猛反対にあって、特区での実験すらままならない状況です。

アメリカの7.1兆円、中国の3兆円、そして日本の1300億円。この数字は、近未来の新しいビジネスは、日本がアメリカと中国に完全に支配されてしまう。そんな未来を予想させるのに十分背筋が寒くなる数字だと言えないでしょうか?

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