はじめに

使い勝手が悪い日弁連のデータベース

このため、処分を出す弁護士会側も慎重になりやすく、依頼人のお金を横領しても、返金していると業務停止にならずに戒告で済んでしまうことがあるため、「弁護士会の懲戒処分は身内に甘い」と言われることもあります。

戒告の場合は、その中身は本当に千差万別ではあるのですが、事件放置や怠慢な事件処理などを理由に処分されている場合は、誠実にやってくれない弁護士である可能性があります。

懲戒歴は弁護士を選ぶうえで是非チェックしておきたいところですが、日弁連は長らく懲戒歴のデータベースを公開してきませんでした。有料で公開し始めたのは2009年からです。


日弁連の弁護士情報検索ページ

しかも、照会できるのは過去3年だけ。なおかつ、その弁護士に事件を依頼しようと思っている場合に限られ、照会する側は身分も明らかにしなければならず、照会をかけたことも相手方に伝わります。

弁護士御用達の民間データベース

こんなに使い勝手が悪くては話になりません。実際、弁護士が最も活用している懲戒のデータベースは、個人が運営している「弁護士懲戒処分検索センター」というデータベースなのです。


弁護士懲戒処分検索センターのホームページ

最もアクセス数が多いのは、全国各地の弁護士事務所です。裁判や交渉で出てきた相手方の弁護士のチェックに使っているのです。

このデータベースは、かつて弁護士からひどい事件処理をされた関西在住のサラリーマンが、問題弁護士から被害を受ける人を減らす目的から個人で構築したもの。2000年からのデータがすべてそろっていて、ネットで誰でも無料で検索できます。

弁護士の懲戒処分は日弁連の月刊機関誌である『自由と正義』に掲載され、少し遅れて官報に掲載されます。この人は日弁連の機関誌をデータベース構築のために定期購読し、定期購読開始以前のものは図書館でチェックして、文字通り、手入力で構築したのです。

データベースは参考程度に

もちろん懲戒歴は万能ではありません。さまざまな力学が働いた結果、不当な処分ではないかと思えるケースも皆無ではありません。データベースに載っているから即、不良弁護士と考えるべきではありません。

逆に、懲戒歴がないから良いというわけでもありません。冒頭の逮捕された弁護士は、過去に懲戒歴はありませんでした。

素人が会って話しただけで弁護士のスキルを値踏みすることはできませんが、人間が持つ「人を見る」力は意外に信頼できるものです。相性の善し悪しもあります。

このデータベースは誰でもアクセスできますし、年度別で検索することもできます。どういう理由でどのくらいの人数が懲戒処分を受けているのか、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

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