「ブロックチェーン」と聞くと、ビットコインなどの仮想通貨を連想する人は多いのではないでしょうか。仮想通貨の信頼性を担保しているとされるのが、この新技術です。

そんなブロックチェーンを、フルーツに取り入れようという取り組みが出てきています。いったい誰が何のために動いているのでしょうか。


ダイヤモンドで先進事例

英国に本社を置く、Ever Ledgerという企業。ダイヤモンドの所有権や権利移転の履歴証明として、シリアル番号やカラット数などのデータをブロックチェーン上に記録するサービスを展開しています。同社がこれまでに記録したダイヤモンドの数は100万近くに上ります。

フルーツの話のはずなのに、なぜダイヤモンドの話をしているのか、不思議に思われたかもしれません。しかし、ダイヤモンドをフルーツに置き換えてみると、見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。

実は今、ダイヤモンドだけではなく、食品の履歴証明(トレーサビリティ)にブロックチェーンを活用しようという動きが広がろうとしています。すでにアリババやIBM、ネスレなどのグローバル企業は、ブロックチェーンを用いた食品流通のトラッキングシステムの開発に取り組んでいるといいます。

たとえば、ある海外企業は魚の漁獲・生産・流通の経路をブロックチェーンに書き込む試みを進めています。レストランで出てきたサーモンにQRコードが添えられていて、それを読み込めば、どんな業者を介してたどり着いたのかがわかる、という仕組みです。

ブロックチェーンをどう生かす?

ブロックチェーンの特徴は「一度書き込まれた値を後から改ざんすることがほぼ不可能」という点にあります。

通常のデジタルデータは、特定のデータ単体を改ざんすることができました。しかし、ブロックチェーンはその名の通り、記録が詰まったブロックが鎖のようにつながっています。すべてのブロックデータが1つ前の情報を受け継いで成り立っているため、1つのデータだけを改ざんしても、後続のすべてのデータブロックを書き換えなければいけなくなります。

膨大な後続データすべてを個人の力だけで書き換えることは、不可能に近いのです。この仕組みによって、データ改ざんを難しくしています。この技術を用いれば、トレーサビリティの証明=産地偽装の防止につながるというわけです。

背景に深刻な産地偽装問題

ブロックチェーンを用いた食品流通のトラッキングが持ち上がった背景には、食品の産地偽装問題があります。

2008年9月には、一部の米穀業者等が工業用として販売されるべきお米(事故米)を食用として不正転売した問題が発生。最近では、全国チェーン居酒屋が海外産ブロイラーを地鶏肉として販売したことが大きな話題となりました。

産地偽装は販売者側で起こります。2008年の事故米不正転売事件も、「大きな利益が出るから」と販売会社が決断して実行されています。これまでのところ、フルーツにおける大規模な産地偽装はそこまで大きな問題になっていませんが、ニュースに取り上げられないだけで、業界ではよく知られた話です。

筆者の知っている事例でいえば、海外産やノンブランドフルーツを仕入れて、ブランドラベルや国産と印字された箱に入れて出荷する、といったものがあります。特に、これが高級フルーツだとしたら、被害はさらに大きくなります。

コストは高くならないのか

ここで気になるのは、なぜそこまで有効な技術なのに、現時点では導入が進んでいないのか、という点です。

これについて、日本ブロックチェーン協会の樋田桂一事務局長は「ダイヤモンドにおけるEver Ledgerの取り組みが先進的なだけで、これから受け入れ態勢が整えば、社会インフラとしてブロックチェーンが受容されていくのではないでしょうか」と説明します。

普及のネックになるように思われるのは、ビットコインのマイニング(採掘)でよく話題に上る“膨大な電力コスト”です。

この点についても、樋田事務局長は「1つの組織内で管理されるプライベートブロックチェーンであれば、マイニングのための設備がなくても承認される場合があります。ブロックチェーンだから高コストになるわけではありません」と指摘します。

現状では、もっぱら仮想通貨のための技術、というイメージが強いブロックチェーン。しかし、社会的な認知が進んでいけば、むしろ有効なトレーサビリティの手段として、後世の人たちには知られることになるかもしれません。