はじめに

フリーマーケットアプリ最大手のメルカリが6月19日、東証マザーズ市場に新規上場しました。同社は、以前から日本の「ユニコーン企業」(10億ドル以上の企業価値を持つ企業)として注目を集めてきたベンチャー企業です。

そんな有力ベンチャーの上場は、日本の新興市場にどんな影響を及ぼしうるのでしょうか。時価総額と市場への寄与度の両面から考えてみます。


ZOZOよりも高い市場の評価

メルカリの2017年6月期の連結業績をみると、売上高は221億円、経常損失は27億円、最終損益は42億円の赤字となっていますが、売上高は前期比で80%増と急速に成長しています。最終損益が赤字なので、一般的な投資指標であるPER(株価収益率)では株価水準を判断できません。

しかし、高成長のネット企業を判断する指標として使われることがあるPSR(株価売上高倍率)でみると、約18.2倍(売上高は来期予想、時価総額は6月21日の終値で算出)。ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの9.8倍などと比較しても、高く評価されていることがわかります。

一方で、フリマアプリ市場はその成長率の高さから、日本国内においてはYahoo!JAPANが手掛ける「ヤフオク!」や楽天の「ラクマ」など、ライバル企業も参入。競争環境は厳しくなってきています。

また、米国への進出も進めていますが、アプリのダウンロード数に対する流通総額をみると、現時点では日本国内ほど効率的にアクティブユーザーを獲得できていません。今後は、上場で得た資金を元手に成長投資を加速して、投資家の期待を維持していく必要があるといえます。

マザーズ市場で最大の銘柄に

このように投資家の期待が高いメルカリですが、東証マザーズ市場にはどのような影響を与えるのでしょうか。

まず時価総額の面では、マザーズ市場で最大の銘柄となりました。下表は同市場での時価総額ランキングです。第2位ミクシィの3.1倍となっており、マザーズ市場の中で圧倒的な存在感となります。

東証マザーズ指数への寄与という面では、どうでしょうか。

新規上場銘柄は、上場してすぐに指数に組み入れられるわけではありません。東証マザーズ指数への組み入れは、新規上場日の翌月末となります。メルカリの場合には2018年7月末となりますが、指数に採用された後のメルカリの値動きがマザーズ指数に与える影響は大きなものになると予想されます。

東証マザーズ指数は時価総額加重方式により算出され、6月19日終値で仮計算してみると9.9%となります。日経平均株価への影響度が高いことで知られるファーストリテイリングの日経平均株価構成率が約8.6%(6月21日時点)なので、それに匹敵する影響度になるのです。

このようにメルカリの値動きは、新興市場全体の値動きにも大きな影響を与えると考えられます。しばらくは、メルカリの値動きに注目が集まる展開が続くのではないでしょうか。

(文:松井証券 シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎)

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