はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

新卒で入社した時は年収が350万円だったので、日々節約をしながら過ごしていました。 現在、年収は600万円に上がりましたが、その分支出も増えました。30歳独身ですが、貯金がまったくありません。今のところ、結婚の予定もありません。このままだと将来どうなってしまうんでしょうか。不安です。
(女性、30代、独身)


花輪: 「かねは入っただけ出る」というパーキンソンの法則があります。年収350万円でも600万円でも収入の多寡に関わらず、入っただけ使ってしまい、貯金がまったくないという人も多いです。

収入の増加以上に生活レベルを上げ過ぎないように注意をする必要があります。利用するスーパー(高級スーパーばかり利用すると食費が高騰します)や、洗剤などの生活用品の値段や量などにも気を配ることが大切です。1つ1つはそれほど大きくないと思っていても、積み重なると大きな出費になるからです。

金額ではなく「割合」で貯金をする

また、入った収入から一定の割合で貯金を作るクセをつけることが大切です。なぜ金額ではなく割合にするかというと、収入の増加に伴って貯金の割合も上げていけるからです。

年収の25%を貯金すると決めていれば、年収350万円で、年87.5万円(生活費は262.5万円)、年収600万円で年150万円(生活費は450万円)を貯めていくことができます。

年収の増加に応じて急激に生活費を上げていくことを防止し、生活費の増加に伴って備えを大きくすることができます。生活費が大きくなれば、それだけ無収入になった場合のリスクも高まります。できれば貯金の割合も収入の増加に伴って上げていきたいのです。

貯めている人は、収入から生活費を使う前に先に貯金をしています。また、ご褒美に予算を作るなど工夫をしています。自由に使えるお金に制限をかけることで、収入に関係なく貯められるようになります。

貯金がないまま老後を迎えると……

危機感を持つことは貯金をする上で有効です。このまま貯金がないとどうなるのか、老後の生活を想像してみましょう。

2017年の家計調査によると、高齢無職世帯(単身)の1ヵ月の生活費は約15万円。それに対して収入は約11万円と、約4万円の赤字になります。65歳から100歳までの35年間、年間48万円の赤字が続くなら、累積して1,680万円になります。このほかにも医療費や介護のための予備費として、最低でも500万円は必要でしょう。つまり、2,180万円程度の赤字になるのです。

退職金などで、この分が補填されれば良いですが、企業の寿命も不透明な時代です。確定拠出年金、個人年金保険、貯金などをして老後に備えることが必要です。

最後に、長く続ける上ではワクワク感を持って取り組むことが大切です。少し貯まったらあえて通帳を記帳するなどして、小さな達成感を味わってみるのも手です。無理のない金額からで良いので、ゲーム感覚で楽しみながらお金を貯めていくのもいいでしょう。

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