原材料や醸造方法にこだわった少量生産が特徴のクラフトビール。独特のフレーバーなどが受けて人気が高まり、今やコンビニでも買えるほど、日本国内では珍しいものではなくなりました。

そんな中で、バルト3国の1つ、リトアニアで生産されたクラフトビールが日本に初めて上陸しました。手掛けるのは北欧発のベンチャー企業、メンバーの出身母体はIT企業という異色の経歴です。

一時期のブームは落ちついた感がある日本のクラフトビール業界に、このタイミングで参入する狙いとは何なのでしょうか。「北欧流」の戦略を取材しました。


ビールのイメージを覆す味わい

「ヨーロッパは非常に複雑な地域で、国境も入り組んでいます。が、そんなことはどうでもいいいんです。大事なのは1つの境界、ビール派かワイン派か、です!」

7月20日、東京・麻布のリトアニア大使館で行われた輸入ビールお披露目会。冒頭挨拶を行ったリトアニアのゲディミナス・バルブオリス大使は、こう述べて会場を沸かせました。

この日に紹介されたのは、リトアニア産のクラフトビール8銘柄。いずれもリトアニアの小規模ブルワリー(ビール醸造所)が手掛ける、独特なビールです。

輸入されたビールの味鑑定を行ったセンソリー応用研究所の米澤俊彦代表は、そのうちの1銘柄「TART ALE WITH PASSION FRUIT」について、「これは感激しました。普通に果汁を入れただけではこうはなりません。もうビールの味わいの範疇から外れているといってもいい」と絶賛です。

8銘柄の1つ「COCONUT MILK STOUT」を試飲してみると、見た目は完全に黒ビール。ですが、ひと口飲むと……甘い。酸味もコクもあって、コーヒーのような、そして後味はココナッツクッキーのようです。黒ビールのイメージを完全に覆すその味わいに、改めてクラフトビールの幅広さを感じます。

ライフスタイルとのセットで売り込む

販売を手掛けるのはj.l.s. trading。2017年に「北欧・バルト三国のクラフトをアジアに輸出する」という企業理念を掲げて設立したリトアニアの輸入販売会社です。

創業メンバーの3人は、スウェーデンでグローバルリサーチを行うIT企業の創業者でもあるという異色の経歴の持ち主。ITによるリサーチ力を活かして、北欧のこだわりある商品を、その文化とともに広めていきたいとしています。

今回日本での販売を決めた理由について、日本法人の長野草児社長は「ビールをよく飲む主要5ヵ国(日本を含む)でリサーチを行った結果、日本では海外産ビールを飲むのはわずか8%と5ヵ国中で一番低い数値でした。ここに、われわれが参入できる好機があると見ています」と説明しました。

さらに北欧・バルト三国は近年、社会福祉の充実さやエコな暮らし、はたまた国家的なIT推進など、さまざまな角度から世間の関心が高まっています。その1つひとつに沿った形で潜在顧客にアプローチすることで、「既存のクラフトビール愛好家だけではない幅広い層の開拓ができると考えています」と、長野社長は意気込みを語ります。

 j.l.s. trading日本法人の長野草児社長

実際、同社が展開している販促イベントは、ビール単体を押し出すものではなく「北欧ライフスタイル」を提唱する形が目を引きます。北欧IT企業を視察するビジネスツアーの報告会に商品を提供したり、地域の不動産会社とコラボレーションし、ビールとともに北欧の夕べを体感してもらうなど、ビールがある北欧の暮らしを訴求し、幅広いファン獲得を狙う戦略です。

ネット販売や他国産の取り扱いも

現在、輸入された8銘柄は、関東圏の一部ビールバーやリカーショップで取り扱いが始まっています。今後はj.l.s. tradigの自社サイトやamazonなどのネットショップでの販売も予定しているそうです。

店頭販売価格は、銘柄によりますが360ミリリットル瓶で560円(税別)から。リトアニアだけではなく、エストニアやデンマークの銘柄も取り扱います。

ちょっとだけ試飲してみたい、他社のクラフトビールと飲み比べたい、という方はビアフェスがおすすめです。j.l.s. tradig は7月28~29日に鎌倉で開催される「御成ぼんぼん祭り」、9月15 ~17日に開催される「ビアフェス横浜2018」に出店予定とのこと。

ここ数年、減少の一途をたどっている国内のビール出荷量。新たな「北欧」ムーブメントは、クラフトビール市場を再度の活況に導くのでしょうか。

(文:編集部 瀧六花子)