「この圧倒的なスプレッド、最強のものになっています。こうなると、よそは儲からなくなりますよ。新規参入を止めるところが続出すると思います。金融庁も審査の手間が省けていいんじゃないですか」

7月31日、SBIホールディングス(HD)の2018年度第1四半期(4~6月期)の決算説明会が開かれました。ネット証券・ネット銀行の最大手として圧倒的な顧客基盤をもつ同社。昨今は仮想通貨交換業の大本命として、北尾吉孝社長の一言一句に注目が集まっています。

前回4月の決算説明会で「夏頃に結論を出す」としていたSBI取引所の開始ですが、宣言通り6月にサービスを開始しました。これまでの進捗はどうなっているのでしょうか。


「圧倒的No.1」

SBIグループによる仮想通貨取引所、SBIバーチャル・カレンシーズは6月4日、先行予約者向けにリップル(XRP)の取り扱いから取引をスタートさせました。以降、6月11日にビットコインキャッシュ(BCH)、18日にビットコイン(BTC)の取り扱いを順次開始しています。

強みは何といっても、売買手数料の安さ。通貨取引時には、売り値と買い値の差額である「スプレッド」が取引所の得る手数料となります。それを圧倒的に小さくし、「圧倒的No.1の取引所」を目指しています。北尾社長も「業界最強のスプレッド」と自信を見せます。

また、取引環境もSBIジャパンネクスト証券のPTS(市場外取引)で運用実績のある取引システムを使用。米国NASDAQと同様のシステムで、世界最高水準の取引環境と銘打ちます。

7月17日からは新規口座開設の申し込み受付を開始しました。大々的な広告を打っていない中でも、申込件数は急速に増加しているといいます。

ブロックチェーン“生態系”は「ほぼ完成」

さらに北尾社長が強調したのは、ブロックチェーン技術を核とした「デジタルアセットエコシステム(生態系)」の進捗です。同社がこれまで着々と行ってきた国内外のブロックチェーン関連技術企業への出資先は、今回公表されたものだけで20社にのぼります(SBIグループ外の出資もしくは提携先、調整中のものを含む)。

仮想通貨を保管するウォレットの管理については、英国nChainとの提携を皮切りに、台湾のCoolBitXやスイスの会社へ出資。米国CoVentureや米国Clear Marketsとは、将来的に機関投資家の参入を前提としたサービスの立ち上げを計画しています。

また、プラットフォーム開発技術を持つOrbと、ブロックチェーンを用いた送金・決済サービスとして「Sコインプラットフォーム」構想も発表しています。参加する企業グループや地域が独自の地域通貨を発行することができ、さらにその地域通貨間や流通仮想通貨との交換も同じプラットフォーム上で可能となる見込みです。

仮想通貨に興味を持つ若い層を取引所運営によって獲得し、SBIグループの既存金融事業(証券・銀行・損保)との相互送客も狙う。さらに取引所を構築するための技術だけではなく、送金・決済を行うプラットフォームの構築や、マイニング(採掘)による仮想通貨の発掘技術に投資することで、デジタルアセット生態系内でのシナジーを加速させ、金融以外の産業への展開を図る狙いです。

「業界の発展のために、それなりにモノ申していく」

体制は万端に見えるSBI取引所。しかし、まだ“アクセル全開”とはいかないようです。北尾社長は、圧倒的シェア獲得に向けてテレビCMなどの大規模プロモーションを計画していると明かしながらも、その開始時期についての明言を避けました。

その要因はやはり、6月22日に金融庁から発表された、仮想通貨交換業の登録業者6社に対する行政処分です。北尾社長は、まずは業界全体を顧客利益最優先の運営にもっていくため、自主規制ルールの制定を優先させるべきとの見解を示しています。

一部報道にあった、北尾社長も理事を務める日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)による自主規制案については、「まだ自主規制団体がどこか決まっていない」としたうえで、JVCEAとして金融庁に自主規制団体申請を行ったことを明かしました。

「仮想通貨は非常な革命、欧米に対するチャンスの領域です。妙に変な規制をしてつぶしてはいけない。誰もが考えて合理的な規制であるべき。業界のために、それなりにモノ申していこうと思います」(北尾社長)

主要各国との比較では、仮想通貨に対する規制は緩いとされる日本。利用者保護とイノベーションの狭間での着地点を、当局と関係者による模索が続いているようです。その中で、存在感が強くなるSBIグループ。このまま仮想通貨業界でも覇権を構築するのでしょうか。

(文:編集部 瀧六花子)