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東証マザーズ市場が冴えない2つの理由

市場特性から反転要因を読み解く

東証マザーズ市場が冴えない動きとなっています。東証マザーズ市場に上場している全ての銘柄を対象とした株価指数、東証マザーズ指数の年初からの値動きを見ると、日経平均株価が▲2.4%であるのに対し、▲23%と大きく下落しています。

この乖離はどこからきているのでしょうか。今回は東証マザーズ市場について掘り下げてみたいと思います。


東証マザーズ市場とはどんな市場?

東証マザーズ市場は1999年11月に開設された新興企業向け市場で、19年に及ぶ歴史があります。特徴は東京証券取引所の一部市場や二部市場いわゆる本則市場に比べて、上場基準が緩く設定されている点です。

今後飛躍的に伸びる可能性を秘めた技術を手掛けているメーカーや、時流にあった店舗フォーマットを手掛ける飲食業など、業種は様々ですが、何れも高成長を目指している企業が主流です。

半面、財務的に脆弱な体質の企業もあり、先行投資等により赤字決算の企業も含まれます。株式投資に当たってはハイリスクながらハイリターンが期待される企業も少なくなく、投資経験が豊富な投資家向けの市場といわれます。

高成長が期待されている銘柄は、株価が相対的に高いバリュエーションで評価される傾向にあります。例えば、代表的な株価バリュエーションの「予想PER(Price Earnings Ratio)」は、株価を1株当り利益で除して算出しますが、銘柄間比較で見た場合にはPERが低い方を割安と考えます。単純に言えば予想PERが20倍の企業は、予想PERが10倍の企業の2倍で評価されている、ということです。

8月21日現在の予想PERを見ますと、東証1部市場が14.4倍、JASDAQが13.4倍、東証マザーズ市場が65.4倍です。東証マザーズ市場の構成銘柄は相対的に企業規模が小さく、成長企業の集合体です。高成長を背景として、高PERで評価されているといえるでしょう。

なぜ東証マザーズ指数は冴えないのか

マーケット全体の先行きの見通しが明朗な時は、個別銘柄の株価バリュエーションも成長性を加味した評価を受け入れやすいでしょう。しかしながら、米中の貿易摩擦など、経済全体の方向性が予測し難くなると、予想PERの絶対的な水準の高さのみが注目され、その背景にある高成長性に目が行き届かなくなります。東証マザーズ指数がなかなか下げ止まらなかった要因の1つとなっていると考えます。

また、この下げの局面が、企業決算の発表シーズンと重なっていることも、東証マザーズ指数の底値を探り難い要因となっていたと思われます。3月期本決算企業の第1半期、4-6月期の業績が発表されています。四半期ベースの業績計画を開示していない企業が多いことに加え、新興市場の銘柄をカバーするアナリストは大型銘柄をカバーするアナリストに比べ、少ないと考えられます。

つまり、会社側が第1四半期業績を発表する、仮にそれが増益であったとしても、会社側が考えていたレベルに対し、投資家はどの程度の実績であったかを推し量るのに時間がかかるということです。そのため、決算発表後に、買いが入り難い状況を作ってしまいます。

加えて、東証マザーズ市場の存在価値が、微妙に変化してきたことも、盛り上がりに欠ける一因かもしれません。

東証マザーズ市場の存在価値とは?

2014年3月、東京証券取引所は、東証マザーズ市場を東証一部へのステップアップを視野に入れた“成長企業向けの市場”という位置付けを明確にしました。具体的には、上場後10年を経過した場合の上場廃止基準の見直しと市場変更を促す市場選択制度を導入し、適用しています。

マザーズ市場に上場している企業には二部市場と同じ上場廃止基準が適用されるとともに、二部市場への変更かマザーズ市場への上場継続かを選択する必要に迫られ、マザーズ市場への上場継続を選択した場合、5年後に再度、二部市場への変更かマザーズ市場への上場継続かを選択しなければなりません。

つまり、10年後には二部市場への変更の方が有利という未来が待っているため、東証マザーズ上場後10年を経ずに、収益拡大の成長の勢いを保ったまま東証本則市場(一部もしくは二部)へ市場変更してしまう銘柄が多発することになりました。

それを補うのが新規上場(IPO)銘柄です。下図は2018年初を100として、東証マザーズ指数とQUICK IPO INDEX(加重平均)をあらわしたものです。QUICK IPO INDEXは市場を横断して、過去1年間にIPOした銘柄の値動きを示しています。

ご覧いただいてお分かりの通り、本年に入ってからのIPO銘柄は相対的に確りとした値動きです。IPO銘柄は上場した翌月の月末から、指数にカウントされます。すべてのIPO銘柄が東証マザーズへの上場とは限りませんが、値もちのよいIPO銘柄が指数に組み入れられることで、指数を下支えしていると考えます。

東証マザーズ指数は構成する銘柄数の絶対数が少ないこともあり、1つの銘柄の人気が指数全体の上昇を牽引することも珍しくありません。東証マザーズ指数が下げ止まらないのは、指数に組み入れられるIPO銘柄が、指数全体を牽引するほどの人気を維持していないことも一因として挙げられます。

今後、マザーズ市場で注目されるのは?

それでは、今後の東証マザーズ指数の展望についてですが、まず、人気のIPO銘柄が指数を下支えする構図が持続すると考えます。8月23日現在、9月のIPO銘柄は11銘柄が発表されております。10月以降も含め、今後のIPO銘柄から指数を代表するような、綺羅星登場を期待します。既上場の銘柄についても、アナリストのレーティングなどを通じて、評価が見直されることによる買いも想定されます。

そのターゲットセクターは、やはり情報・通信です。情報・通信セクターは東証マザーズ市場の代表的セクターです。各市場に占める、情報・通信セクターの比率を見ますと、東証1部の9.3%、東証JASDAQの13.8%に対し、東証マザーズは35%に達します(8月22日現在)。

情報・通信セクターは、例えばインターネット・コンテンツ・ビジネスのように、一般的には製造業のような巨額な設備投資がかからない企業も少なくありません。すなわち、アイデア次第では短期に成長軌道に乗り、東証マザーズへIPOできている企業も沢山あります。組み込みソフト、SMS、フィンテック、AI等々、市場活性化に資する銘柄の登場に期待です。

(文:いちよし証券 投資情報部 宇田川克己)

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