はじめに

「人は足から老いる」と言われます。年をとって足腰が弱ると、ケガをしやすくなったり、外出をしなくなったり、転倒による骨折が原因で要介護状態になってしまうこともあることが知られています。最近では、ウォーキングやトレーニングによって足腰を鍛える高齢者が増えています。

では、「人は口から老いる」という言葉は聞いたことがあるでしょうか。歯や口の健康をおろそかにすると、噛む力や舌の動きが悪くなり、充分な栄養が摂れなくなることがあります。また、滑舌が悪くなったり話しにくくなることで、人との交流が減り、家に閉じこもりがちな生活を送るようになることがあります。特に、高齢期には、身体機能や社会性、精神性の低下をもたらす可能性がある深刻な問題です。

現在、日本では、子供時代は虫歯の削減、成人以降は歯周病の予防、高齢者では残存歯数の増加に重点をおいて、歯や口腔ケアを推進しています。具体的に年代による歯の状況についてみていきましょう。


子供の虫歯は大きく改善

3歳、6歳、12歳の虫歯がある割合(処理済みのものも含む)は、減少しています。2003年には、6歳や12歳の6~7割に虫歯がありましたが、今では4割程度にまで減っています。親世代にあたる1980年頃は、6歳、12歳ともに9割以上、3歳でも5割以上に虫歯があったことから、虫歯対策が急激に進んでいることがわかります。要因としては、予防歯科の意識の高まりやフッ化物の利用が普及したことがあげられます。

図1 子供の虫歯有病率(処置済みを含む)

(資料)6歳、12歳は文部科学省「学校保健基本統計」各年
3歳は、国立保健医療科学院「全国乳幼児歯科健診結果」各年

高齢者の残存歯数も大きく改善

次に、高齢者については、およそ30年前から厚生労働省と日本歯科医師会等が、80歳で20本以上自分の歯を持つことを目指す「8020運動」を推進しています。

図2 20本以上の歯をもつ割合

(注)各年代の数値は、5歳群団で集計された割合を、2群団分単純平均して作成した
(資料)厚生労働省「歯科疾患実態調査結果の概要」2011年、2016年

およそ30年前に、80歳以上で20本以上の歯を持っていたのは1割程度でしたが、今では4分の1と、大幅に改善しています。