近年、日本に続々と上陸している、台湾発のスイーツ店。10月11日、また新たな店舗が進出してきました。台南に構える本店では連日行列ができているという人気店、「蜷尾家/NINAO」です。

多くの台湾スイーツ店がしのぎを削っている日本市場において、どんな商品を携え、いかなる戦略で切り開こうとしているのでしょうか。日本側パートナー企業のトップを直撃しました。


ジェラートピケ運営会社が展開

東急田園都市線の三軒茶屋駅から歩いて数分。栄通り商店街の中ほどに、その店舗はありました。

記者が訪れたプレオープン日の10月10日午後4時には、店舗の前に長蛇の列ができていました。通行人も思わず足を止め、店舗スタッフに何が起きているのか確認するほどの賑わいぶりです。


プレオープンに長蛇の列。地元密着で蜷尾家の世界観が出せる街として選んだのが三軒茶屋だった

蜷尾家にとって世界で2店舗目の常設店となる三軒茶屋店は、アパレルブランド「スナイデル」「ジェラートピケ」などを展開するマッシュホールディングス傘下のマッシュセールスラボが日本での独占販売契約を結び、開業しました。

店内では、ティーゼリー入りという新食感のお茶やミルクティーを販売。ミルクティーはこだわりの茶葉を煮出したもので、ウーロン茶3種、紅茶1種の中から、週替わりで1種類を提供します。ホット、常温、コールドの3種類から選ぶことができ、常温とコールドにはオプションで菊花ゼリー、なつめゼリーという2種類の薬膳ゼリーを入れられます。

日本限定フレーバーも販売

しかし、三軒茶屋店の最大の売りといえば、スッキリと甘い“スキアマ”なフレーバーが特長のソフトクリームでしょう。週替わりで2種類のフレーバーが用意される予定です。

プレオープン日に提供されていたのは、台湾で人気ナンバーワンを誇る「塩ミルク」(税込み380円)と、日本限定の新フレーバー「東方美人茶」(同540円)。後者は、高級茶葉を粉末状にし、ミルクベースと合わせたもので、お茶本来の甘さが味わえつつ、後味はスッキリしているという、これまでにない味覚です。

「健康志向が高まる中で、ベタベタと甘いスイーツはご時勢に合わなくなりました。後味がサッパリしているので、ヘルシー志向の女性はもちろん、飲んだ後の締めのスイーツとして男性にもオススメです」

マッシュセールスラボの満塩雅一社長は、蜷尾家のソフトクリームの魅力を、こう説明します。このスキアマフレーバーを前面に押し出し、競合ひしめく台湾発スイーツ市場で勝負を挑みます。

ジェラート世界4位の腕前

それにしても、なぜマッシュは蜷尾家のスキアマに着目したのでしょうか。

発端は、昨年9月にマッシュが台湾に出店したジェラートピケカフェでした。この時、現地で期間限定コラボレーションのパートナーとなったのが、蜷尾家を率いる李豫代表。ジェラートの世界選手権で4位に入った経歴を持つ李氏の腕前にほれ込んだ満塩社長が、日本への出店を提案しました。


内装は本漆喰を用い、ソフトクリームの素材感を再現

実は蜷尾家、台湾最大の都市・台北にも有名ブランド店と組んで、期間限定店舗をオープンしたことがありますが、常設店舗は台南の1店舗だけ。台湾でも、なぜ2号店が台北ではなく、日本なのか、と不満の声が挙がったといいます。

裏を返せば、それだけマッシュ側の熱量が大きかったということかもしれません。「タピオカミクルティーなどが盛んに日本に進出していますが、本当の台湾の味はもっと素材を生かしたもの。それを日本の人にも知ってもらいたかった」と、満塩社長は振り返ります。

“アイス機のフェラーリ”で製造

この“素材を生かす”という点において、製法にもこだわりがあります。

一般的なソフトクリームは、店舗が既製品のソフトクリームベースを購入し、その中に各店独自のレシピを加えて作っているそうです。しかし、蜷尾家は“アイスクリーム機のフェラーリ”とも呼ばれる「カルピジャーニ」の機械で、ベースから店内で作っています。

「鮮度が違うし、料理として作り込むことができるので、素材の味を生かして、スッキリとした後味が実現できています」(満塩社長)

ただ、こうしたこだわりが制約条件になっている側面もあります。機械を扱う人によって、味がまったく異なるからです。三軒茶屋店の店長も、台南の本店で3ヵ月修行をし、開業に至ったといいます。

「次にそれができる人が出てこないと、新店は出せません」(同)。スキアマの味が日本でも広がっていくには、三軒茶屋店の成功だけでなく、後継人材の育成が不可欠となってきそうです。

(文:編集部 猪澤顕明)