はじめに

目に見えて効果を感じ、妊娠・出産へ

――効果はすぐに出ましたか?

:手術前の精子の数は1ccに5600万くらいだったのが、平均値の1億3000万にまで上がりました。運動率も一旦は下がったのですが、その後上がった。結果的に子宮外妊娠にはなってしまったのですが、妊娠に成功しました。

:その後、薬を使わず、無麻酔での採卵を行うところに、再度病院を変えた結果、妊娠しました。夫の手術前は、胚盤胞の状態までほとんど育たず、余剰胚もできませんでした。でも、術後は胚盤胞到達率も高くなって、こんなに劇的に変わるんだとびっくりしました。

――結果として、出産までに術後どれくらいかかったのですか?

:2011年に手術して2014年に妻が妊娠したので、術後、3年くらいですね。

:その間に子宮外妊娠で左の卵管を切除したり、右の卵管もつまったりなどしていましたが、精子の質が良くなっていたので、体外受精で長女を妊娠・出産できました。長女の時に余剰胚ができたので、卵を凍結し、次女を生むこともできました。

――会社には、不妊治療のことは伝えていましたか?理解はありました?

:上司には伝えました。理解があったかはわかりませんが、妻の治療で頻繁に病院に付き添うため、会社を休まざるをえない時が多かったので。理由を告げずにただ何度も休むのは誤解を生むため、会社にも伝えておきました。

結局は“2人の問題”で、2人で乗り越えるもの

――男性不妊に悩む人へアドバイスを。

:私は恥ずかしいなどとは感じなかったのですが、男性自身、まだ男性不妊について知識が浅い、よく知らないということが、無駄な不安や抵抗感を抱かせ、病院に行きづらくしたり、逆に問題を大きくしてしまっている部分はあるかもしれません。知ることが大事かなと思います。

:不妊治療は、男女どちらのことにしろ、独りよがりで続けられるものではないんですよね。うちは夫が強く子供を望み、私も彼に子供を抱かせてあげたいという気持ちが強くあったので続けられた。子供が欲しい気持ちの温度にズレがあると難しい。2人の子供のことなのだから、どちらか一方のせいで……という考えにならないよう、共に支え合うことが重要かなと思います。


不妊治療というと、周囲にどこまで話すべきか悩む人が少なくありません。Aさんご夫婦の場合、記事でも言及されているように、「タブーにしたくない」といったことから、友人や勤め先にも「子供ができにくいこと」「男子不妊でもあること」を自分たちから話して、周囲との関係に対処しました。

例えば、飲み会に誘われても、「ごめん。今度、また治療に入るから」などとサラリということで、周囲も不必要に重く捉えず、理解してくれる。オープンにすることで、治療に関する情報が入ってくるなどの良い点があった、と言います。

一方で、両親以外には話さず、勤め先を含め、周囲にはほとんど相談しないことで対処したという人も。次回は、オープンにしなかったいうご夫婦のケースを紹介します。

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