読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

転勤族のため、30年間社宅住まいで現在も社宅に入居中です。過去に都内にマンションを取得しましたが、その後、関西に転勤することが決まり、一昨年に都内のマンションを売却しました。売却金は全額、投資信託で運用中です。もうすぐ60歳になり、定年退職したら社宅からも退去します。現在、夫婦二人暮らしで、二人とも健康です。定年退職後、退職金を含む資産全体の運用方針についてアドバイスをお願いします。


〈相談者プロフィール〉
・男性、58歳、既婚(妻:56歳・パート)、子ども2人(ともに独立)
・職業:会社員(金融・一部上場)
・手取り世帯年収:1,080万円
 夫:1,000万円
 妻:80万円


〈資産〉
・投資信託:3,000万円
・定期預金:900万円
・一時払終身:300万円
・退職金:4,000万円予定(60歳)


〈60歳以降の収入等について〉
・現在の会社に年収250万円程度で65歳まで再雇用される予定
・確定拠出年金:1,300万円(60歳で引出して運用したい)
・62歳からの年金収入:年間約180万円
・65歳からの年金収入:年間約500万円(国民年金・厚生年金、企業年金基金)


内藤 :仕事をリタイヤして収入が減少していくシニア世代にとって、一番心強いのは定期的なインカム収入だと思います。

シニア世代にインカム収入が向いている理由

たとえ、60歳で1億円の資産を持っていたとしても、使っていけば、その資産は徐々に減っていきますから、収入がなければ節約しなければならず、生活は縮小均衡してしまいます。

このように資産が減っていく中で、年齢を積み重ねていくと、いくら資産があっても不安になるものです。

だから、今から準備すべきなのは、多くの資産を持つことよりも、収益性の低い金融資産から、不動産のような定期的なインカムを運んでくる資産へとシフトをさせることだと思います。

投資家層が厚く、売却が容易なワンルームから

株式のような金融資産は長期的に資産形成をしていくのに向いていますが、リーマンショックのような相場の混乱期には、インデックスでも50%近く下落することがあります。そのインパクトを和らげるために、債券などの資産へ分散投資を行っていくことが大切なのですが、分散投資をしたとしても短期的には資産の20%程度のマイナスは覚悟しなければなりません。

資産価格の上下に一喜一憂するよりも、資産からもたらされる定期的な収入に目を向ける投資の方が、シニア世代には向いていると思います。といっても、不動産投資にもリスクがありますから、物件を良く吟味して、投資を慎重に始めることが大切だと思います。

金額の大きな物件に投資をすると資金が集中し、失敗した時のリスクが大きいですから、ワンルームのような比較的少額で投資ができ、投資家層が厚く、万が一の場合でも、売却が容易な不動産から始めるのが良いでしょう。

物件を複数所有することで、物件の集中リスクを回避しながら、インカムを着実に積み上げるプランを組み立てることができます。

不動産投資は管理会社の選定が重要

ご質問者の場合、退職金とこれから数年の収入や貯金なども入れれば、1億円近い資産があります。

不動産は物件の選択も重要ですが、それ以上に「誰から買うか」「誰に管理してもらうか」が大切です。ワンルームマンションの場合、都心の中古物件で空室率の少ない優良な管理を行っている会社を選択すべきでしょう。実績のある管理会社に依頼すれば、購入後の空室による不安も軽減されます。

不動産に関する知識がないのであれば、まずはこのような会社が開催するセミナーに参加したり、不動産投資に関するフェアや講演で話を聞いたり、専門の書籍を読んで勉強してみてはどうでしょうか。

いずれにしても、若年層とシニア層の資産運用は目的が異なります。資産形成よりも、定期的な収入の確保に軸足を置いた資産運用戦略を立てていくようにしましょう。