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サッポロビール、新マーケティングに浮かぶ苦悶の理由

食関連ベンチャーとタッグ

ビール大手のサッポロビールは10月下旬、個人とオリジナルビールを開発・シェアする新サービス「HOPPIN’ GARAGE(ホッピンガレージ)」をスタートさせました。

運営に当たって手を組んだのは、食コミュニティサービス「KitchHike(キッチハイク)」を運営する企業、キッチハイク。2012年に創業したベンチャー企業です。

サッポロビールはなぜ今、ベンチャー企業と組んで新サービスを始めるのでしょうか。そこには、大手ビール会社ならではの危機感がありました。


ビール好きのための交流プラットフォーム

「ビール好きのためのC to Cコミュニティサイト」を標榜するホッピンガレージ。大きく分けて、3つのサービスがあります。

1つ目は「自分が飲みたい世界にたった1つのビールをつくり、仲間とシェアできる」というもの。まず、「こんなビールを作りたい!」と考える人(企画者)がそのイメージを企画書にまとめ、専用サイトに応募します。サッポロビールは応募案を審査し、採用案を選定。企画者とより詳細を打ち合わせながら、小ロットでビールを製造します。

ビールが完成したら、ホッピンガレージ上でイベントを立ち上げます。まさに“新ビールお披露目会”です。新ビールを飲んでみたい人はイベント会費を払って参加します。ここでの評判が良ければ、サッポロビールによる商品化も検討されるそうです。

2つ目は「ビール好きが集まるイベントに参加できる」というもの。新ビールお披露目会はもちろんのこと、それ以外にもビール好きが集まるイベントが開催されます。ビール開発者の話を聞くことができるものから、なんとサッポロビール以外のビールメーカーの記念館やバーに行くものまであるようです。

そして3つ目は「自分でビールイベントを開催できる」というもの。運営側で用意されたイベントだけではなく、自らが主催者となってビールに関するイベントを計画し、ホッピンガレージ上で参加者を募ることができます。

このように、ホッピンガレージはビールを軸にさまざまな体験ができ、集まった仲間とビールにまつわることをシェアできるサービスなのです。それにしても、このようなコミュニティサービスの運営をサッポロビールが手掛けるのはなぜなのでしょうか?

ビールメーカーの危機感

10月22日に行われた新サービス発表会見、サッポロビールの林直樹取締役が明かしたのは、これまで行ってきた商品開発手法の行き詰まりでした。

大手ビール各社が新商品を開発する際には、2つの方法があるといいます。1つは、大々的なマーケットリサーチを行い、消費者のニーズに合った商品を作るやり方。もう1つは、メーカーの研究開発から生み出された新技術を使って商品を作るやり方です。

しかし最近は、リサーチで消費者の意見を聞けば聞くほど、既存商品に近づいていってしまうといいます。また、新しい技術もそれがメーカーの独り善がりになってしまい、発売した商品が消費者の支持を受けられないことも多々あるそうです。事実、大手ビール5社が公表している課税出荷数量は6年連続で過去最低を更新しています。

「今はお客様が感じる共感や好きなコミュニティを通じたシェア、広がりが起きてこないと、なかなか売り上げにつながっていかない時代」と林取締役。ビールを核としたコミュニティを形成し、そこから出てくるアイデアや反応を商品開発に取り入れていこうという狙いです。

過去の反省を超えられるか

サッポロビールが消費者の意見を取り入れて商品開発を行うのは、今回が初めてではありません。2011年からスタートした「百人ビール・ラボ」は、ビール愛好家100人とともに日ビールの商品開発を行い、「百人のキセキ」というオリジナルブランドで販売を行っています。また、ビールに関連したワークショップやイベントも毎年開催しているのです。

この百人ビール・ラボと今回のホッピンガレージの違いについて、サッポロビールは「継続的にコミュニティを活性化させる仕組み」だと話します。林取締役は「百人ビール・ラボも実りある取り組み。しかし、集まってくれている100名の方はビールのコアな愛好家だけあって、メーカーの視点と非常に近かった」と話します。

協業するキッチハイクが持つ食コミュニティサービスでは、サービスに集まる参加者それぞれがイベントを立ち上げることができ、参加者主導のコミュニティ創出がなされています。このキッチハイクのノウハウを取り入れることで、固定のビール愛好家のみの発案ではなく、ビールに興味を持つ人の斬新な意見を継続的に取り入れられる、としたのです。

サッポロビールの林直樹取締役(左)とキッチハイクの山本雅也代表(右)

サッポロビールによると、応募された新ビール案の採用決定は月1回。その採用基準について林取締役は「採算や作り方うんぬんではなく、熱い思い、それがあったらこちらも作りたいと思っちゃいますよね」と話しています。

はたしてサッポロビールの狙い通り、一般消費者発案の大ヒット商品は生まれるのでしょうか。ホッピンガレージのサービスは10月22日よりサイトオープン、ビール案の応募受付は来年1月から開始予定です。

(文:編集部 瀧六花子)

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