はじめに

11月に入り、朝晩の寒さが身に染みる季節となりました。最低気温が10度を下回ると一気に需要が盛り上がるといわれているのが、鍋料理です。

トマト鍋やミルフィーユ鍋、塩バター鍋など、これまでも毎年、さまざまな鍋料理がトレンドとなってきました。今年、需要が急拡大している最新のトレンド鍋とは、どんなものなのでしょうか。


ムービージェニックな新商品

グツグツと煮込まれた赤いスープの中央に鎮座するのは、白い大きなモッツァレラチーズ。おたまを入れてすくい上げると、トローリとろけたチーズが食欲をそそります。

この鍋料理は、外食チェーンの大坂王将と楽天が共同開発した「マグ麻辣(まーらー)水餃子鍋」(税・送料込み4,280円)です。しびれるような辛さが特徴の香辛料・花椒(ホアジャオ)を効かせた麻辣スープに、大阪王将の水餃子と宮崎県産の観音池ポークがセットになっています。

最新トレンドの分析から生まれた「マグ麻辣水餃子鍋」

冒頭のように、お好みでチーズをトッピングすれば、ラクレットのような“とろけるチーズ感”が演出できます。動画映えするその様子が、まるで火山から沸々としたマグマが溶け出る姿に似ているため、商品名に「マグ」という言葉を入れたそうです。

実はこの新開発の鍋料理、楽天市場での最新トレンド分析を取り入れて開発されたといいます。約2,500品目の鍋セットを取り扱っているという楽天市場で今、需要が急拡大している鍋商品には、4つのキーワードがあるようです。

今年を象徴する鍋の特徴

1つ目のキーワードは「刺激系」。2018年にブームとなった、しびれるような辛さを楽しむ「マー活」が、鍋の世界にも押し寄せているといいます。

実際、楽天市場では、火鍋の売り上げが昨年9月に比べて、今年9月は26.6%増加しています。また、マー活に欠かせない香辛料であるホアジャオの売り上げは同期間の比較で60%も拡大しているそうです。

2つ目のキーワードが「韓国系」。豚の背骨とジャガイモを煮込んだ「カムジャタン鍋」の売り上げは同期間で2.5倍に伸長。キムチチゲ鍋も2.2倍に膨らんでいるといいます。

3つ目のキーワードは「豆乳」です。今年はSNSをきっかけに、若い女性の間で豆乳飲料を凍らせた豆乳アイスがブームになりました。こうした流れが鍋にも押し寄せ、豆乳鍋の需要が2.4倍に拡大しているそうです。

そして、4つ目のキーワードが「本格鍋」。これは鍋料理そのものが本格的という意味ではなく、お店で使っているような本格的な調理器具の売り上げが好調であることを指しています。

楽天・ECコンサルティング部の小野由衣シニアマネージャーによると、これら4つのキーワードには共通する背景があるといいます。それは「五感で楽しむ」という点です。

食べて、その香りを楽しむのはもちろん、昨今のインスタ映えの流れを受け、目と耳でも楽しもうというニーズが高まっているといいます。また、調理風景を撮影し、インスタグラムなどで誰かに見てもらうことが前提となっているので、本格的な調理器具も求められるというわけです。

鍋ラインナップ急拡大の背景

ここ十数年の間に急激にラインナップが拡大した感のある鍋料理。その背景にあるのが、鍋料理に関連する各種の技術進歩です。

過去十数年の鍋料理の進化の背景には、数々の技術進歩があった

たとえば、2004年にはカニのポーション化技術が発達したことで、これまでは1杯ごとで販売していたものが、部位ごとで購入できるようになりました。これに伴い、カニ鍋のバリエーションが拡大しました。

また、2000年代中盤以降には冷凍技術が進化。各地の特産スープや海産物が日本全国で手に入るようになり、クエ鍋やたこしゃぶ、セリ鍋などが広がったといいます。

こうした供給者側の事情の一方で、購入者側でも環境の変化が進行しました。ネット通販の拡大を受け、お取り寄せグルメが浸透。近隣で購入できないものを通販で買い、プチ贅沢を楽しむという志向が高まったことで、多様な鍋料理が受け入れられていったとみられます。

まさに、需給双方の思惑が合致する形で、進化を遂げてきた最近の鍋料理。利用する側としては、さまざまなバリエーションの鍋が楽しめるという点において、ポジティブな流れと評価できそうです。

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