はじめに

特別養子縁組を考えるご夫婦にとっての最大の関心事は、民間事業者の選び方ではないでしょうか。費用面を含め契約前に民間事業者について十分に調べておくことは、納得いく形で子どもを迎える際の大切なポイントとなります。

ここからは、民間事業者を介して生後2週間の女の赤ちゃん(当時)を迎えた自営業、齋藤和也さん・あかりさん(現在49歳・46歳、仮名、東京都在住)夫妻のケースを通じ、民間事業者を選ぶ際に大切にすべき事柄について2回にわたり考えます。まずは費用面から――。


不妊治療で、貯金もお金も体力も使い果たして

齋藤さん夫妻が迎えた愛里ちゃん(仮名)は、現在、4歳になりました。齋藤さん夫妻は、育児と仕事を両立させながら、初めての子育てに奮闘しています。特別養子縁組を考えたのは、他の夫婦と同様に、不妊治療への希望が見えないことでした。

「不妊治療は7~8年、行っていたと思います。最終的に経験した体外受精は1回に約100万円もかかって、貯金も体力も精神力も使い果たしてしまいました。凍結していた卵子をすべて使い切ってしまったこともあり、夫と十分話し合って、40歳になったらもうやめようということにしたんです」(あかりさん)

不妊治療をやめた齋藤さん夫妻は、特別養子縁組を考えるようになりました。まずは管轄の児童相談所に出向いて養子縁組里親に登録しましたが、赤ちゃんが紹介されるとは限りません。そこで民間事業者にも登録しようと、インターネットで事業者探しをスタートさせました。どの事業者が自分たちに合っているのかは分かりませんでしたが、数ある民間事業者の中でも、公的な印象があった「一般社団法人あんしん母と子の産婦人科連絡協議会」(略称:あんさん協)という産婦人科団体に登録することにしたそうです。

しかし、あんさん協に登録した後も「ひとつだけではなく、複数の民間事業者ついても知っておいたほうが納得できるかもしれない」(あかりさん)と、複数の民間事業者が参加する特別養子縁組セミナーに参加してみることに。しかしセミナーで、様々な民間事業者の説明を聞き終えた後、あかりさんが感じたのは、他の事業者の赤ちゃん斡旋へのビジネス的な姿勢でした。

「もちろん、民間事業者は実母さんのために使っているわけです。予期しない妊娠をした女性をシェルターのような場所に囲ってあげたり、入院費や生活費、また事業者の職員の給与だったりとかを支払ってくれます。だからビジネスとして回さなければやっていけないのは良く分かるんです。でも子育てには、ビジネス的な要素は何となくなじまないように思いました」(あかりさん)。

結果的に、セミナーに参加しさまざまな事業者を比較検討したことで、このまま、あんさん協で進めていきたいという気持ちがさらに固まったそうです。

登録から3か月後に、面接の連絡が

児相からは、子どもの紹介が3人ほどありましたが、手を上げてもなかなか決まりませんでした。一方の、あんさん協からは登録から3か月後に面接連絡が来て、その後、2回の面接を経て、結果的に赤ちゃんが紹介されたのは、登録から約10か月後のことでした。「一般的に民間は児相より早いとは言われていますが、実感としてもその通りだと思いました」と、あかりさんは振り返ります。

※教育入院とは…養子縁組で母親となる養親に入院をしてもらい、赤ちゃんの授乳や抱っこ、おむつの替え方、沐浴などといった育児の方法を学んでもらう内容です。

齋藤さん夫妻が、愛里ちゃんを迎える際にかかった費用は、実質29万4,230円です。詳細は、次のようになっています。

※子どもの入院費は、子どもの入院費として請求された23万9,590円から、結果的に齋藤さんの加入する国民健康保険等から還付された87,630円を引いた額。

「産婦人科医院の団体ですので、生みの母の入院費は3万円以外、私に請求されていません。生みの母の健康保険から出る出産一時金(42万円)は、すでに差し引かれての明細かと思います。金額からして、食事代や個室代程度だと感じました。あんさん協は産婦人科だから、主に出産時と出産後のケアに対するかかった費用は払ったということになります。結果的に、私が出産してもかかる程度の金額だと思ったことが、納得できた理由でした」とあかりさんは話します。

加えて、特別養子縁組の審判のために、家庭裁判所に支払った手数料は、印紙代の800円のみでした。「あとは交通費くらいでしょうか。子育てしながらの資料作成は大変でしたが」(あかりさん)。

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