はじめに

米中間選挙は、事前の予想通り与党・共和党が上院で勝利する一方、野党・民主党が下院で多数派を握る「ねじれ議会」が生じる結果となりました。まずは互いに融和ムードを優先する姿勢を前面に押し出してはいますが、不法移民対策などを巡る溝は深く、目先、債務上限の引き上げや予算審議など財政運営が混乱するリスクを拭えそうにありません。


米国の「ねじれ議会」は何を意味する?

そもそも米中間選挙は、大統領への信任投票という色彩を帯びる傾向が強く、不満を持つ人の投票率が勝りがちなため、与党が苦戦するケースが目立ちます。にもかかわらず、2年後の大統領選に向けて株価が上昇しやすいというアノマリー(明確な根拠はないものの、よく当たるという経験則)がよく知られています(下図)。

これには、現職の大統領が支持率を意識した政策を打ち出す傾向があり、野党も対抗措置として万人受けする政策の成立に腐心することが多くなる点が、少なからぬ影響を及ぼしていると推測されます。今回も例に漏れず、中間選挙後の株高を期待したいところです。

ただ、議会運営が停滞すると、トランプ大統領の「米国第一主義」の悪い面が顕在化するリスクが高まることに留意が必要となりそうです。追加減税等の景気刺激策を打ち出しにくくなり、議会に縛られず、大統領権限で進められる通商政策に傾斜する可能性が高まるとみられるためです。

しかも、中国との貿易摩擦を巡っては、共和党よりも民主党の方が保護主義に傾斜している感もにじみ出ており、トランプ外交への警戒はなかなか後退しないとみるのが妥当と思われます。

次のターゲットは日本?

今月末に開催される米中首脳会談に向けて、米中貿易交渉が進展するとの期待が浮上する一方、仮に「米中問題」が片付いても、「次は日本が標的になる可能性を否定できない」との見方が日本株の重荷として意識されている模様です。

というのも、日米両国は9月26日の首脳会談において、新たに日米物品貿易協定(TAG)交渉を開始することで合意、年明け早々にも交渉が始まる見通しとなりました。TAGは、投資・サービス分野などを含む自由貿易協定(FTA)とは異なるとされていますが、2国間交渉を迫る米国の圧力を回避する苦肉の策との受け止めが広がっており、懸念材料と見なされることが多いようです。

しかし以下の点で、安倍政権にとっては現在望み得る最善に近い合意を得られたと解釈すべきと判断しています。最大のポイントは、農林水産物について、日本の既存の経済連携協定(EPA)における市場アクセス水準を上限とすることが盛り込まれたことです。これ以上の農業自由化を迫られる事態を回避できたことは、来夏に参院選を控える同政権にとって、素直に朗報と捉えられます。また、交渉中は自動車の追加関税を発動しないという、米EU合意に酷似した約束を取り付けることにも成功しています(下図)。

 米国を除く環太平洋経済連携協定「TPP‐11」の年内(12月30日)発効に漕ぎ着けたことも、米国の強硬姿勢に対する抑止力として機能する公算が高いなど、日本が手を拱くことなく、着々と守りを固めていることを強く意識するべきでしょう。

(文:岩井コスモ証券 投資情報部 堀内敏一)

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