はじめに

中学受験に関する数字を森上教育研究所の高橋真実さん(タカさん)と森上展安さん(モリさん)に解説いただく本連載。

いよいよ中学受験本番に向けて2カ月を切りました。小学6年生のお子さんがいる家庭では、志望校の最終決定も佳境を迎え、塾の面談や家族会議に追われているかもしれません。今回は「志望校に大学付属校を選ぶのはどうなの?」というお話です。

今回の中学受験に関する数字…30~69%または70%以上


大学付属校人気はまだまだ続く

<タカの目>(高橋真実)

クリスマス・ソングが流れ、街が華やいだ空気に包まれる中、私立中学では出願開始が近づいています。

2018年の入試のトピックは何と言っても大学付属校人気でした。模擬試験の状況では、今年もこの傾向は継続しそうです。

大学付属校には2つのタイプがあります。系列大学への内部推薦進学率が70%以上の"付属校"と30~69%の"半付属校"です。たとえば、早稲田大学系列の中学では、早稲田大学高等学院、早稲田実業学校は付属校、内部推薦枠56%の早稲田中学校は半付属校です。

一方、慶應義塾大学系列の中学は全てが付属校となります。半付属校の例としては、経営母体は異なるものの、1学年定員のほぼ半数にあたる80名の立教大学への推薦枠を持つ香蘭女学校があります。

付属校・半付属校ともに人気が高まっているのが、昨今の大学付属校人気の特徴と言えるでしょう。この背景は何でしょうか。一番の理由とされているのが、2020年の大学入試改革です。英語の外部試験の活用など、まだまだ不透明な要素がある上に、先日行われたプレテストでも、記述式問題への対応のむずかしさが浮き彫りになり、不安は高まるばかり。こうした不安から、大学入試そのものを回避するという流れがあります。

大学に対する政府の政策も理由の1つです。入学定員厳格化、東京23区内の大学に対する原則10年間の定員増の禁止といった政策が進められることにより、早慶やGMARCH等の上位私立大学の進学を早めに保障しておこうという保護者の意識が少なからず働いていると考えられています。

この他、大学受験を意識することなく、高校生の間に海外へのターム留学や1年間の留学に行き、グローバル教育を受けるという選択をしているとの指摘もあります。また、高大連携での幅広い学びや受験を意識せずにやりたいことに取り組めることも付属校の魅力ととらえられています。

先ごろ、慶應義塾大学法学部の1年生が司法試験に現行制度史上最年少で合格しました。この学生は慶應義塾普通部時代に、課題研究として小説を執筆したことがきっかけとなって法律に興味を持ち、独学で勉強、高校生で予備試験に合格し、大学1年で司法試験合格となりました。大学受験に備えることのない中で、自分自身が発見したテーマにじっくり取り組むことができた、典型的なケースかと思います。

付属校の人気の背景には、わが子に苛烈な大学受験を経験させたくないという親心が働いているとも言われています。さて、この大学付属校人気の行方やいかに…

付属校を選ぶ際に確認したいポイントとは

<モリの目>(森上展安)

タカの目さんの数字、今回は付属校から系列大学への進学枠のパーセンテージですね。

付属の多くは共学校ですから、昨今騒がれた医学部の男女比率に関しては、たとえば医学部を持つ付属校である日大系、東海大系、東邦大東邦などはどうなのか、医学部でなくとも何らかの内規がないか気になるところです。

もちろん、公式の見解は「成績次第」というところでしょうが、女子の成績は男子より良いと仰る高校関係者が多いので、案外人気学部の女子進学比率は高いのかもしれません。ここは公式見解に沿って成績次第と考えておくことにして、実は入口の中学入試の男女比率は必ずしも共学校で五分五分ではありません。

毎年、市販の学校案内には、男女比率が分かるように在籍者数が男女別に示されていますから、注意してみてください。「成績次第」のところは当然ですが年によって若干の人数が違います。

一方、男子7に対して女子3というような一定の比率を示すところがあります。これらは私学各校の裁量権ですから、問題にすることではありませんが、その私学の考え方、在り方が映されていると考えることにしましょう(もっとも学校によって人気に男女差が大きいところもあります)。

そうはいっても、付属校は概して女子に人気が高いので、男女の倍率差が大きくなりがちです。いわば付属女子は難関を突破した猛者が多くなりがちな一方、付属男子は進学校向きではないタイプに好まれる傾向があります。

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