はじめに
次第に寒さが増し、街並みにも年の瀬を感じられるようになりました。「(平成最後の)年末感謝セール」などの広告を目にする機会も増えるこの時期、忘年会を開催する会社や組織も多いのではないでしょうか。
宴席は業務時間とは異なり、お互いの距離を縮めたり、普段接点の少ない人との交流を深めたりできる貴重な機会です。一方、苦手なタイプの人と席が一緒になると仕事以上に気を遣うことになったり、大人数の宴会では盛り上がっているグループと静かなグループに分かれていたりするのを目にすることがあります。
そこで、「平成最後の忘年会」をみんなで楽しく過ごせるように、忘年会をテーマに行動科学を使ったコミュニケーション手法を紹介します。
コミュニケーションのタイプを見極める
今回ご紹介する内容は、人のコミュニケーションのタイプを見極めて対応することで、コミュニケーションを円滑にするという手法です。
1970年代、米国のデイビッド・メリル博士らが提唱した「ソーシャルスタイル理論」により、人は4つのタイプに分けられることが明らかになりました。この4つのタイプの行動パターンを知り、それぞれのタイプに合った宴席での対応をすることで、円滑なコミュニケーションを図るというものです。
ソーシャルスタイル理論では、人の性格がある特徴的な行動に表れることを発見し、行動傾向から個々人に対しての適切なコミュニケーションの方法を把握します。
相手の言動に関して、「感情を表す/抑える」と「意見を主張する/聞く」の2つの観点から相手を4つのタイプに分類。タイプごとに相手にとって好ましいコミュニケーションの方法があります。
自身や相手のソーシャルスタイルを理解し、どのようなコミュニケーションをとるべきかがわかると、コミュニケーションの精度が高まって、相手との距離もぐっと近くなるはず。それではさっそく、自身が会話する相手がどのタイプかをチェックしてみましょう。
4つのタイプの基本性格と宴席での接し方
以下の表で、相手の行動に当てはまるものにチェックをしていきましょう。
いかがでしたか。一番多くのチェックが当てはまるのが、相手の「ソーシャルスタイル」です。それでは、それぞれのタイプの特徴に触れながら、タイプごとの宴会での話し方や幹事をお願いする場合のポイントについて説明します。
タイプA:アナリティカル(Analytical)
自分からあまり話をせず、すぐに打ち解けるよりも、一定の距離を置きながら時間をかけて少しずつ相手を理解していくタイプであり、一見物静かで反応の薄い印象を与えます。一方、自身の関心の高い分野では豊富な知識や意見を持っていることが多いのも特徴です。
アナリティカルの相手と宴席で話をする時には、一般的な話よりも、趣味や興味など相手の得意領域を確認し、それを深掘りしていくと、意外に饒舌に話をしてくれます。たとえば、「釣り道具に詳しいのですね!釣り竿とかメーカーによって何が違うのですか」など、スマートフォンでチェックしながら会話をするイメージです。
また、アナリティカルなタイプに幹事を任せると、念入りな情報収集に基づく計画を立てるのが得意なので、メニューまでこだわってお店を選択してくれるでしょう。ただし、決定に時間がかかることも多いため、依頼をする場合は期限を具体化しておきましょう。
タイプB:ドライビング(Driving)
決断が速く、行動派でぐいぐい引っ張るタイプ。無駄な事や非論理的なことを嫌うため、ややビジネスライクでドライな印象を与えるタイプです。
ドライビングの相手と宴席で話をする時には、相談なのか情報共有なのか、話す目的を明確にするとズバリ答えてくれるでしょう。たとえば、ドライビングの先輩に対して「仕事の相談なのですが、アドバイスいただけないでしょうか」といったイメージです。
ドライビングな人はテキパキと仕事をこなすタイプが多いので、幹事を任せると、スケジュール調整や会場選びなど、すぐに対応をしてくれます。ただし、目的に合わせて判断する傾向があるため、宴会の趣旨や要望はハッキリと伝えましょう。
タイプC:エミアブル(Amiable)
いつもニコニコしていて、優しい癒し系のタイプ。相手の気持ちを大事にし、相手に合わせることが得意。優しくサポートしてくれる印象を与えるタイプです。
エミアブルの相手と話をする時には、仲間やチームの話題などが盛り上がるでしょう。たとえば、「最近入社した●●さん、頑張っているよね~」といったイメージです。
エミアブルの人は周囲のメンバーのことをよく考えるタイプが多いので、幹事を任せると、一人ひとりの好みなどを聞きながら、みんなで合意できるプランを考えます。ただし、優柔不断で決めるのに時間がかかる傾向があるので、適宜様子をうかがってアドバイスしてあげるとスムーズかもしれません
タイプD:エクスプレッシブ(Expressive)
ノリが良く、盛り上げ上手なタイプ。会話をリードするのも得意です。予定外のことも楽しめるタイプですが、計画性がなく、細かなプランを立てるのが苦手な一面もあります。
エクスプレッシブの相手と話をする時には、とにかく相手の話に相槌を打ってほめると、気持ちよく話をしてくれます。たとえば、「へぇ、先輩は本当にすごいですね~。尊敬しちゃいますよ!」といったイメージです。
エクスプレッシブの人は、とにかく楽しい場を作ることに力を注ぐタイプが多いので、、幹事を任せるときは演芸やゲームなどの企画を依頼すると良いでしょう。ただし、大雑把なため、細やかな対応を依頼するとストレスになることがあります。
宴会を制するものはビジネスを制する!
このように相手のソーシャルスタイルに合わせてコミュニケーションをすることで、普段あまり会話をしない相手であっても親睦を深めることができます。加えて、各タイプの相手と話す場合のスキルは、社内のみならず接待などの場面にも有効です。
また、幹事を誰かに任せる場合は、「会が緊急なのか」「細かい調整が必要なのか」などを勘案して依頼する人を決め、適宜必要な情報を伝えましょう。大きい宴会などではテキパキ決めるドライビングとみんなの調整役のエミアブルの人にペアで幹事をお願いするなど、特性を活かした組み合わせを考えることで、さらに運営を円滑にすることができます。
日常からソーシャルスタイルを意識してコミュニケーションをとるようにすると、社内でのソーシャルスタイルの考え方は宴会に限らず、交渉、面談など、さまざまなシーンでの影響力が強くなります。宴会の多い12月にぜひ、ご活用ください。