はじめに

サクラクレパスにセーラー万年筆、黒とオレンジの表紙で有名なスケッチブックまで――。文房具マニアはもちろん、マニアではない人でも十分楽しめそうなブースの立ち並ぶ、日本最大級の文具の祭典が12月14~16日の日程で、東京・大田区の東京流通センターで開催されます。

このイベントを開催しているのは、出版取次の日本出版販売(日販)という会社。業界以外の人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、出版社と書店をつなぐ流通業者の大手で、出版業界に大きな影響力を持っています。

そんな同社がなぜ、文房具のイベントを開催することになったのでしょうか。2年目となる今回の見どころとともに、日販の思惑を深掘りしてみます。


出店社数は1.5倍、アイテム数は2倍に

昨年に比べて会場の広さを2倍に拡大して開かれる、今年の文具女子博。出店社数は123社と、昨年に1.5倍に。3日間で約2万5,000人を集めた昨年の盛況ぶりを見て、大手メーカーの参加が増えたといいます。

取り扱うアイテム数も、昨年の2.5万から今年は5万に倍増。今年の特徴は、カスタマイズできる商品が多いことです。定番商品だけど、色などの組み合わせを変えた商品が増えたそうです。

「文具女子は自分だけのものを作りたいというニーズが強いです。今回は、そうした事情に対応するメーカーさんが多いようです」(日販の担当者)

東京で購入できない文房具がたくさん

今年の見どころは、普段東京では買えないメーカーが多数出店していること。たとえば、今回から新設された「台湾女子市」というブースでは、日本ではなかなか手に入れることができない、台湾のクリエイターや文具店のオリジナル商品を購入可能です。

また、地方や個人が作っている文具メーカーも出店。奈良の旧市街に店を構える「coto mono」のブースでは、関西人なら誰もが知っているフエキ糊の大仏バージョン容器入りを販売します。


フエキ糊の大仏バージョンを販売する「coto mono」のブース

ほかにも、主婦クリエイターが消しゴムはんこで作ったオリジナルデザインの文房具を取り扱う「RiraRiraはんこ」では、女子博限定の福袋を購入することができます。


「RiraRiraはんこ」では、ゆるかわデザインの文房具を販売

昨年好評だった企画も、パワーアップして帰ってきました。たとえば、黒いカプセルの中に限定マスキングテープが入っている「マスキングテープくじ」は、ハズレでも限定マスキングテープをプレゼント。当たりが出れば、マスキングテープブッフェに参加できます。


「Drink」とのコラボカフェではオリジナルドリンクを味わえる

会場の中を歩き疲れた時は、銀座・伊東屋が運営する「Drink」とのコラボカフェでオリジナルドリンクが楽しめます。通常店舗で人気のフレッシュレモネードに加えて、会場限定の2種類のドリンクを味わうことができます。

出版不況でイベント開催に活路?

それにしても、出版取次である日販が、こうしたイベントを開催する狙いはどこにあるのでしょうか。実は同社、近年はイベントの開催にも力を入れているのです。

横浜市の赤レンガ倉庫では、2016年からこれまでに5回、「パンのフェス」を開催しています。パン好きのための「パンシェルジュ検定」を運営していることがきっかけでスタートしたこのフェスは、毎回12万人以上が来場する人気イベントに成長。こうしたイベント開催のノウハウを他でも生かせないか、という発想が根底にありました。

折しも長年の出版不況によって、取次業界には今も逆風が吹いています。最近では、業界中堅の倒産や身売りが相次いでいます。こうした中で、少しでも収益源の多角化を図りたい思惑も透けて見えます。

今年は、昨年の2倍となる5万人の来場を目指しているという文具女子博。この先も順調に成長を続け、日販にとって収益柱の1つに育つでしょうか。

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