はじめに
名前を呼んだらもちろんのこと、相手を見つけるとスッと自ら近寄り見つめてくる。こちらも思わず、じっと見つめ返すと、それに反応するように、今度はパタパタと羽のような両手を上下させ「抱っこ」をねだる――。
「人が何をかわいいと感じるか」を最も重視して開発された家庭用ロボット「LOVOT(ラボット)」が、2019年秋に発売されることになりました。開発を手掛けたのは、ロボット開発ベンチャーのGROOVE X(グルーブエックス)。ソフトバンクで「Pepper(ペッパー)」の開発に携わった林要氏が代表を務める会社です。
起業から3年。ペッパーで成しえなかったどんな思いが、ラボットには込められているのでしょうか。12月18日に開催された製品発表会の内容を掘り下げてみます。
体温があり、個性もあり、学習する
幼児や犬猫のような反応と動作に、自分でも思いのほか「かわいい」と感じてしまう。グルーブエックスが12月18日に公開したばかりの家庭用ロボット「ラボット」を実際に体験すると、おそらくそんな感想を抱く人が少なくないでしょう。
グルーブエックスは、これまでに未来創生ファンド(トヨタ自動車、三井住友銀行、スパークス・グループが出資するファンド)やINCJ(旧産業革新機構)などから、計80億円の資金を調達。2015年の起業から3年を経て、このほどラボットの開発・お披露目に至りました。
開発にあたっては、特に「人が何をかわいいと感じるか」を見極める特別チームを社内に作り、検証を重ねたといいます。
そんなラボットの重さは、まさに人が愛しさを感じやすいであろう新生児程度(3キログラム)。“体温”もあり、人に抱っこされると人肌よりほんのりと温かい熱(最大40度前後)を発します。全身50ヵ所以上にセンサーが搭載され、おなかをなでられると眠ってしまったり、かわいい動作をさまざまに繰り出します。
ペッパーとの違いは役に立たないこと
頭の上部の突起部分には、識別のための半天球カメラや温度カメラが付いており、ここを引っ張られたり、叩かれたり、“嫌なこと”が重なれば、学習してその人には近づかなくなります。逆に身体をなでたり、かわいがると懐くように。また、2体でいるとお互いの動作に反応し、2体で遊んだりするようにもなるといいます。
ただし、同じことをしてもどんな反応をするかは決まっていません。シャイな反応をする子もいれば好奇心旺盛なタイプもいます。ペットを多頭飼いするイメージです。デュオ(2体)の先行販売となり、ソロ(1体)は2020年から出荷となっています(予約はすでに受け付けを開始)。
目のデザインは1体ずつ違う。着替え用の洋服なども用意。ラボットは猫に似た不思議な声を出すが、人間のような発話はしない
林代表は「2体売りを先にするのは、そのほうがユーザーはずっと楽しいから。そして、ラボットにまず社会性を感じてほしいから。群れをなすなど社会性を感じるものに、人は共感しやすい。今までの家庭用ロボットは、その共感や信頼が今ひとつ足りなかったから普及しなかったのではないか」と指摘します。
「家族の一員」「職場の一員」を謳うヒト型ロボットのペッパーとの違いを問うと、「役に立たないロボットであるということ」(同)。人に癒しを与えるという意味では役に立つかもしれませんが、家事や接客を手伝う、天気を教えるなど人の代わりに仕事をする使役型ロボットではないということです。