はじめに
最近賃貸マンションに引っ越したKさん(男性)のもとに、ある日突然借金取りが「金を返せ」と訪ねてきました。話を聞くとSという人物が借金を重ねており、逃げるように出ていったそう。
借金取りに身分証明書を見せて「Sではない」ことを理解させ、帰ってもらいましたが、郵便でも督促状が届いており、困り果てています。
Kさんは管理会社に連絡。回収してくれるとの約束を取り付けましたが、迅速に動いてもらえず、怒りに震え、届いた郵便物はすべて捨てるようになりました。
しかし、最近になって「これは犯罪なのではないか」と心配になっているそう。元々引っ越した人間がきちんと後始末をしなかったことが原因ですから、正当な行為!と最終的には納得しているとのことですが…。
実際のところどうなのか、法律事務所アルシエンの日高義允弁護士に見解を伺いました。
前居住者の郵便物廃棄は犯罪?
日高弁護士:「郵便物の扱いについては、郵便法という法律が定められており、77条では、日本郵便の取り扱う郵便物を、正当な理由なく、き損すると、刑罰の対象となる旨、定められています。
そのため、ご相談のケースでは、前の住民の方の郵便物を捨ててしまうと、郵便法77条違反として、刑罰の対象となり得ます。また、郵便物次第で、私用文書等毀棄罪(刑法259条)や器物損壊罪(同法261条)といった犯罪にも該当する恐れがあります。
郵便法では、誤配達された場合についても定められており、誤配達を受けた者は、日本郵便に連絡等をするといった対応をとることが義務として定められています(42条)。実際、最寄りの郵便局などに連絡すれば、以前の住民宛の郵便物が届かなくなるように処理をしてくれます。」
前居住者の不始末といっても、勝手に人の郵便物を廃棄することは、犯罪になる可能性が高いようです。
管理会社の責任を問うことはできる?
Kさんは管理会社に対応を依頼し、事実上「無視」されています。「管理責任」を問うことはできないのでしょうか?
日高弁護士:「郵便法上、誤配達があった場合に、日本郵便へ連絡等をしなければならないのは、大家ではなく、誤配達を受けた当人です。
そのため、管理会社は日本郵便などへの連絡義務を負いませんし、せいぜい現在の住民には多少の手間をかけさせるだけといえますので、罪を問うのも難しいと考えます。」
こちらも難しいようですね…。