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配当大盤振る舞いでも「キューピー」の株価が冴えない理由

個人投資家に人気の銘柄に何が?

年が明けて早3週間。11月決算企業の本決算公表がほぼ一巡しました。その中で目を引いたのが、1月10日に決算発表を行ったキューピーです(正式な社名は「キユーピー」ですが、本稿では一般の人にも馴染みのある「キューピー」で記載します)。

今回発表した直近決算期(2018年11月期)の純利益は、2012年11月期から7期連続で過去最高を更新しました。また、すでに始まっている2019年11月期には創業100周年を迎えるため、配当性向3割で計算した金額を切り上げたうえに5円の記念配も上乗せしています。このため、記念配も含めた配当性向は35%。前期比で7円もの増配です。

それなのに株価は冴えません。1年前は3,000円を超えていたのに、昨年3月下旬頃から下がり始め、年末のクリスマスショックで下げが加速し、1月18日終値は2,518円。好決算にも市場はまったく反応しませんでした。その原因は何なのか、少し深掘りしてみたいと思います。


キューピーの事業構造とは?

まずは本題に入る前に、キューピーが手掛けている事業をおさらいしておきましょう。 キューピーといえばマヨネーズやドレッシングなどの調味料が有名ですが、タマゴ製品、それにサラダ・総菜が3大事業です。

2018年11月期の売上高は、それぞれ1,534億円、1,009億円、1,183億円。本業の儲けを示す営業利益は調味料が144億円と他の事業を圧倒していて、それに次ぐのがタマゴ製品で60億円。サラダ・総菜は44億円でした。

この他にキューピーには物流子会社のキユーソー流通システムがあり、上場もしています。キューピー依存度は全体の売上の8%程度でしかなく、グループ外部からの売り上げが1,383億円と、3大事業に匹敵する規模です。営業利益も56億円稼いでいますから、食品3事業+物流で4本柱を構成しているといったところです。

ちなみにジャムの老舗・アヲハタも連結子会社ですが、売上高はキューピーの連結売上高の3.8%、営業利益は2.8%でしかありません。

キューピーはスーパーやコンビニで見かける家庭用の製品以外に、業務用も製造しています。出して盛りつけるだけでいい大袋入りのポテトサラダやゴボウサラダ、お店でチンするだけで顧客に提供できてしまうスクランブルエッグやオムレツ、目玉焼きのほか、パンや菓子の原料に使う卵液、街中の洋菓子店も顔負けのスイーツなども扱っています。

ここまで作り込まれたら、飲食店は人件費の高い料理人を雇う必要を感じなくなるだろうと思わせる商品が多数取りそろえられています。十分な厨房設備を備えていない喫茶店でもランチ営業ができてしまう理由が、よくわかる気がします。

短期・中期ともに事前計画に未達

本題に戻りましょう。短期と中期、2つの視点からこの会社の業績を見てみると、「7期連続の最高益更新」という言葉の響きとはやや異なる姿が浮かび上がります。

まず終わった2018年11月期の実績を短期的な視点で見てみましょう。期初計画との対比でいうと、売上高は65億円の未達ですが、営業利益は1億円の上ブレです。ただ、期中に計画を上方修正しているので、修正計画対比では4億円の未達です。

一方、中期的な視点で見ると、2016年11月期~2018年11月期の中期計画との対比では、売上高で515億円、営業利益で25億円の未達です。計画は売上高が13.6%増、営業利益が34.8%増でしたが、実績はそれぞれ4.3%増と25.5%増でした。

成熟産業といえる食品業界にあって、これだけ成長すれば十分ともいえます。計画が高すぎたという見方もできるでしょう。それでも、未達は未達です。

さらに、2019年11月期は次の2021年11月期までの中期計画の初年度で、2021年11月期の目標は売上高が2018年11月期に比べて115億円増の5,850億円、営業利益が同49億円増の380億円です。率に引き直すと売上高が同0.7%増、営業利益は同4.7%増。前の中計と比較するとずいぶん控えめです。

この3ヵ年計画が前提になっていますから、2019年11月期の会社側の業績予想は売上高が5,600億円(同2.4%減)、営業利益が332億円(同0.4%増)。減収は前期に子会社を1社売却している影響ですが、営業利益は実質横ばい計画です。

純利益は0.4%増で、形式的には8期連続の最高益更新計画となっています。しかし、この伸び率では、投資家が失望したとしても無理はありません。

ファン株主の少なさも下押し材料に?

厳しい評価にさらされる理由は、株主構成にもありそうです。

キューピーは個人株主の保有割合が24%程度。かつては十数%台でしたが、1990年代末の金融危機以降、リスク資産の保有比率低下を求められた金融機関が保有株を放出した結果、個人株主の保有割合がここまで増えたのです。

しかし、よく比較されるカゴメは個人株主の割合が6割を超えています。キューピーは創業家が今も18%を握っている影響もなくはないですが、それを差し引いても差は歴然としています。優待も3年以上継続保有していないともらえませんから、カゴメほどファン株主作りに熱心ではありません。

ファン株主はプロ株主のように非情ではありませんから、多少期待値を裏切っても動じません。もっとも、投資家の厳しい評価で会社が鍛えられることも真実。終わった期の実績からすると、今期の計画が控えめだと見ることもできます。良い意味で、市場の予想を裏切ってくれることを期待したいところです。

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