はじめに

2018年の株式市場は、日経平均株価がバブル後最高値を更新した一方、年末には一時2万円を割るなど波乱の展開となりました。

そして昨年の株式市場で忘れてはならないのがIPO(Initial Public Offering=新規株式公開)です。どのような銘柄が新規上場したのか、その傾向はどのようなものだったのか。前・後編の2回に渡り解説します。


話題銘柄が多かった2018年IPO

2018年のIPOは、話題満載な銘柄が上場した年でした。6月にはメルカリ(4385、東証マザーズ)、7月にはMTG(7806、東証マザーズ)、12月にはソフトバンク(9434、東証1部)がIPOしました。

メルカリは、日本では数少ない企業価値10億ドル(1ドル=110円とすると1,100億円)超の未上場ベンチャー企業(ユニコーン)とされており、市場では以前より上場が予想されていた銘柄です。

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ソフトバンクは、ソフトバンクグループ(9984、東証1部)の中核子会社で、携帯キャリア大手3社の一角です。その調達額は約2兆6,000億円(公募価格を基に算出)と、調達規模もさることながら、上場直前にキャリアの通信障害が発生するなど、多方面で話題となりました。

2018年のIPO全体の調達金額は3兆1,000億円超と過去最大となりました。この数字は約30年ぶりの更新となりましたが、ソフトバンク1社の資金調達金額が全体の約85%を占めるいびつな構図でした。

巨額調達額のソフトバンクを除いたベースで、2018年の1銘柄当たりの調達金額の平均は約54億円です。100億円を割れ少額化が進んだと言われた2017年よりも、さらに少額となりました(下図)。

少額IPOがどんどん進む?

IPOの調達金額別割合を2014年以降で見てみると、100億円未満の銘柄が占める割合に各年で大きな変化はありません。2018年はというと、ソフトバンクを除くと少額化が目立ちましたが、100億円以上の調達金額企業の割合が他の年よりも多くなっています(下図)。

それにも関わらず、2018年の調達金額が少額化となった背景には、調達金額が少額な銘柄が増加したということではなく、多額の調達金額をした銘柄の上場がなかった、ということが影響をしたと考えられます。

例えば、2014年には官民ファンド・産業革新機構が出資したジャパンディスプレイ(6740、東証1部)、2015年政府が放出した郵政3社、2016年はLINE(3938、東証1部)や九州旅客鉄道(9142、東証1部)がIPOした一方、2018年は、ソフトバンクを除いた大型IPOがありませんでした。

また、相対的に調達金額が多額となる再上場銘柄数が少なかったことや、例年よりもその調達金額が少額だったことが、全体の調達金額の少額化への流れの一因となっていることも考えられます。

<文:投資情報部 野原直子>

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