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IPOの傾向から見る、日本の産業構造の変化とは?

近年のIPO傾向分析・後編

2018年の株式市場は、日経平均株価がバブル後最高値を更新した一方、年末には一時2万円を割るなど波乱の展開となりました。

そして昨年の株式市場で忘れてはならないのがIPO(Initial Public Offering=新規株式公開)です。前回記事では、近年IPO銘柄数は比較的横ばいで推移するも、1社あたりの調達金額が少額化の傾向にある点をご紹介しました。

後編の今回は、なぜ1社あたりの調達金額が少額化しているのかを中心に、近年のIPO銘柄の特徴についてご紹介します。


情報通信業界の台頭が光る

この資金調達の少額化の流れは、IPOを行う企業の産業構造の変化があげられます。バイオ関連銘柄が減少する一方、AI(人工知能)などのICT(情報通信技術)が台頭し、IPOに占める比率が上昇してきています。

バイオが含まれる医薬品業種が直近IPO銘柄数で最大となった2013年と、2018年のIPOの業種別比率を見てみましょう(下図)。

IPOに占めるバイオ銘柄の比率は減少し、ICTが含まれる情報・通信の比率が上昇していることがわかります。前者は多額の研究開発費が必要である一方、後者は通信費などのインフラコストが低下しています。つまり、バイオ銘柄のIPO数の減少が、資金調達の少額化へとつながっていることが考えられます。

また、企業がIPOする目的は資金調達だけではありません。株式を公開すること、すなわち上場企業となることで、知名度のアップが見込まれます。

さらに、上場企業ということで取引上の信用力強化もあげられます。人材確保のための優位性も考えられます。設備投資やM&Aのため多額の資金が必要だからIPOをする、というだけでなく、先述したように多様な目的を第一にあげる企業が増えていることも、影響していると考えられます。

上場後の価格形成はどうなっている?

2018年の初値平均騰落率は104.9%と、過熱感が意識された2017年に次ぐ騰落率となりました。 中でも、4月にIPOしたHEROZ(4382、東証マザーズ)は公開価格4,500円に対して4万9,000円の初値を付け、公開価格比で10倍以上となったことが話題となりました(下図)。

IPOの件数が多い時は、初値騰落率が高くなる、という傾向があります。マーケットが良好だとIPOも順調に進みます。次々とIPOが出てくる中、類似銘柄も注目されることにより資金循環が活性化され初値が上がる、という好循環ができたと考えられます。

AI(人工知能)、ICT(情報通信技術)、人材・働き方改革関連企業が、やはり市場の注目度が高く、初値も高かった傾向がありました。技術がどう製品やサービスに活かされているのか、よりわかりやすい銘柄の上昇が目立ちました。

ただ、IPO銘柄は、初値天井とも揶揄されるほど上場後の株価は冴えない場合が多くあります。また、騰落率が示すように、非常にボラティリティの大きな値動きになることも留意すべきでしょう。上場後は個別銘柄と同様、じっくり企業の内容を見極める投資が必要だと考えます。

<文:投資情報部 野原直子>

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