はじめに

新たな通貨で「お金に色をつける」

――eumoでは「eumo」という単位の新たな通貨を作り、「お金に色をつける」と昨年11月の設立お披露目会で話されていました。どういう意味ですか?

お金に“出し手の色”をつけるという意味です。事業の目的の2つ目です。これまでお付き合いしてきた投資家は、先ほども言いましたが、“いい会社”の持続を目的とし「もっと社会的なことに自分のお金を使いたい」と考えています。自分のお金を何に使うかだけではなく、自分の出したお金の“受け手”がそのお金をどこにどう使うのか。そこも重視して、お金の使い先や託し先を選んでいます。

――例えば私はブロックチェーンの技術を活用して、マイナンバーを“私”ではなく“私の支払った税金”につけてほしいと思います。「自分のお金が何に使われているか」「無駄に使われていないか」をチェックできるのでないかと期待するからです。おっしゃるのはこれと似たイメージですか?

おっしゃる通りです。eumoに投資する人は、eumoの支援先企業の商品やサービスを新しい通貨eumoで買える。いわばeumo経済圏ですね。eumoの投資基準に共感し、我々の管理を信頼できる限り、eumoに関わる全ての人が自分のお金の出どころ、使われ先について安心してお金を使うことができる。

エアビーアンドビーなんかは、ゲストとホスト、双方を評価できるシステムになっていますよね。それと同じ仕組みです。

特に、第一次産業の人の中には命がけで魚を獲ってきたり、非常に努力してコストをかけて無農薬で野菜を作っている人がいる。でも、今の貨幣経済の仕組みの中では、まずは安いものほど売れやすい。値段を見たら、あとは大きさや見た目だけで「同じ白菜でしょ?」と判断されがちです。見えない努力の部分はお金として評価されにくい。

であるならば、売る側も高い・安いという「大小」だけで価値が決まる今のお金ではなく、「もらうお金の種類を選ぼうよ」という提案でもあります。出どころがわかることを始め、eumo経済圏で使えるなど、これまでのお金とは違う付加価値の付くお金をもらう。

これをしないと、社会的事業の価値は永遠に認められず、お金も足りなくなり、持続できなくなるのではないでしょうか。私たちはもうお金に定義されるのではなく、逆にお金を定義しなくてはいけない転換期に来ていると思います。

まずは「信頼できるお金」が必要

――単純にお金の「大小」だけで価値を一律に判断するからこそ、公平な評価ができたり、ビジネスが広がり、雇用を生む大きな産業として成り立つようになった面もあります。お金がより絶対的な価値と力を持つことで、身体能力や生まれだけで全てが決まらないよう、ある程度バランスをもたらしている側面もあります。でも……

本来あるべき姿ではない方向にいってしまいましたよね。お金はただの手段だったのに、いつのまにか目的化しました。効率や規模、利益を過剰に追うようになって、いわゆる「資本主義が行き過ぎた」と言われる現象に陥っています。

もちろん、多くの人が良いものを手に入れられるように原価を下げるなど一定線までの企業努力はすべきです。でも、そこを越えて、児童労働や農薬、果ては種まで変えて利益(お金)を追うとなると、もはや本当のものや、本当に必要なものは一体何なのか、誰にもわからない。

リーマンショックの原因の一つであるサブプライムローンも、稼ぐ効率を上げるためにいいものと悪いものを混ぜ合わせた商品を作った結果、貸し手である投資家も一体何に投資しているのかがわからなくなった。「お金の出し手と受け手が分断されてしまったのが破綻の原因」だと思います。

こうなると、モノやサービスを買う側はもちろん、売る側にしても親族しか信じられないので「ホンモノ」とか「本当にいいもの」は親族にしか配らなくなる。そういう実態があります。でも、それって全然、よくない。

人間社会は実際のところ、物々交換で必要かつ欲しい衣食住の全てがそろえば、お金はいらないですよね?お互いに提供するものが、本当に社会に役に立つものになっていればいいだけのはず。

とはいえ、今あるものを全否定して、単純に物々交換の社会に切り替えようとしても無理。今の資本主義で成功している人、やっていきたい人もいますし、過渡期が必要で、それにはまず「信頼できるお金」が必要です。

色のついたお金とは、その「信頼できるお金」であり、常連さんにだけ出す特別な商品。物々交換やツケの概念を戻すための手段です。それをテクノロジーでやれる時代になりました。

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