はじめに
ホワイトチョコレート以来、約80年ぶりに誕生した「ルビーチョコレート」。鮮やかなルビー色と、これまでのチョコレートの概念を覆すようなフルーティーさ、それにフレッシュで酸味を感じる香りが特徴で、“第4のチョコレート”という別名も併せ持ちます。
2018年のバレンタインデーはネスレ日本が国内の独占販売契約を結んでいたため、同社以外はルビーチョコを販売できませんでしたが、6ヵ月間の契約が終了した今年は複数の菓子メーカーやショコラティエがルビーチョコでバレンタイン商戦に参戦しています。
ルビーチョコの本格参戦によって、商戦に変化は起きているのでしょうか。最新の商品ラインナップから、分析してみます。
「ルビースパークを感じてもらいたい」
「控えめな甘さ、フレッシュなフルーティーさ……。シャンパン、日本茶、日本酒との組み合わせも味わってもらいたい。日本のすべての人に、バレンタインデーに“ルビースパーク”を感じていただきたい」
「ルビーチョコレートRB1」を開発した世界的なチョコレートメーカー、バリーカレボージャパンのパスカル・ムルメステール社長は、今年1月に開かれたルビーチョコのバレンタイン向け商品の発表会の冒頭、こう意気込みました。
ダーク、ミルク、ホワイトに続く、“第4のチョコ”として昨年10月に日本に本格的に上陸したルビーチョコ。その前後から、さまざまなメディアやインスタグラムをはじめとしたSNSでも取り上げられ、国内のチョコ好きの間で話題となりました。
ムルメステール社長は「日本はルビーチョコの売り上げで世界をリードしています。日本のポテンシャルは大きく、今後も多くの企業で導入していただけると考えています」と、初の本格参戦となるバレンタイン商戦への期待を口にしました。
白餡と練り上げた変わり種商品も登場
この日の発表会には、菓子メーカーや有名ショコラティエなど計6社が8種類の商品を持ち寄り、それぞれのアピールポイントを説明しました。
たとえば、「VANILLA BEANS」のブランド名で展開しているチョコレートデザインは、同社の人気商品である「ショーコラ」のルビーチョコバージョンを開発。フランボワーズの酸味とショーコラ独自のココアクッキーのほろ苦さが、ルビーチョコの甘酸っぱさを引き立てる工夫が施されています。
チョコレートデザインの「ショーコラ・フランボワーズ」(税込み378円)
現在、年間に200万個を販売するというショーコラ。今回のルビーチョコを投入することで、10%の売り上げ増を狙っています。
また、エーデルワイスが展開する「アンテノール」では、ライムの酸味を効かせたホワイトチョコムースをルビーチョコでコーティングし、ルビーチョコの香りと味わいを感じさせる「ルビーショコラ」という商品を、3月末までの期間限定で販売しています。
変わり種は、ぎんざ空也が手掛けた「つきルビーチョコレート」。ルビーチョコと白いんげん餡を練り上げたルビーチョコレート餡を、柔らかい食感のバタークッキーで挟んだクッキーサンドです。
ぎんざ空也の「つきルビーチョコレート」(税込み324円)
白いんげんの甘さとルビーチョコの酸味が溶け合うことで、和とも洋とも表現しがたい独特な味わいになっています。餡に占めるルビーチョコの比率は約40%と、企画当初の想定よりもふんだんに使ったそうで、素材を生かすことに重点を置いて開発したといいます。
レアアイテムだからこそ?
このように、各社各様の工夫をこらし、ルビーチョコの新商品を投入している、今年のバレンタイン商戦。実際の売り場の状況はどうなっているのでしょうか。
大丸松坂屋百貨店によると、ウェブカタログに掲載している約900点のバレンタイン商品のうち、ルビーチョコを使ったものは10~15点程度。ブランド数だと、全体で約200ブランドのうち、5~7ブランドくらいだといいます。
実態としては、ルビーチョコはまだレアアイテムにとどまっているのが現状といえそうです。ただ、裏を返せば、今年のバレンタインデーにルビーチョコを贈ると、贈られる側にとっては印象深いプレゼントになるかもしれません。
大丸松坂屋百貨店のバイヤーによると、バレンタインデーのチョコレートはかつてのような「本命・義理チョコ」から、自分へのごほうびやプレゼント、家族や仲間でシェアするものへと、位置づけが変化。「複雑化・多様化した人間関係の中で、感謝を伝えるコミュニケーションツールになっています」(同)。
今年のバレンタインデー、日頃お世話になっている人や頑張っている自分に対してルビーチョコをプレゼントすれば、例年とは少し違う、特別なバレンタインデーになるかもしれません。