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紛糾の「統計不正問題」、多くの批判が“的外れ”な根本原因

“経済分析のプロ”が一刀両断

厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正問題が国会で問題になっています。「アベノミクスの成果を強調するために結果をねじ曲げたのではないか」という、うがった見方をする人もいるようです。国会の議論では、「共通事業所ベースの数字が正しく、そのベースの実質賃金の伸び率を公表しないのはおかしい」という趣旨の意見もあります。

しかし、2018年の数字が強めに出たのは、同年1月に実施された標本交替の影響が少なからず働いている面もあり、その際に「経済センサス-基礎調査」の影響などが出たようです。今回は「毎月勤労統計」について考察してみたいと思います。


統計不正問題に潜む“3つの誤り”

「毎月勤労統計」に関する不適切な調査が問題になっています。主な論点は、次の3つです。

第1の問題は、500人以上規模の事業所については全数調査をしなければならないのに、東京都の分で約3分の1のサンプルしか調べていなかったという、明白なルール違反があったことです。

なぜ全数調査をしなければいけないというルールを破ったのか、その原因を究明し対策を考える必要があるでしょう。調査員の人手不足が背景にあるというなら、必要な人員を確保するということも大切です。

統計操作上の初歩的なミスをしてしまったことが、第2の問題です。東京都の500人以上規模の事業所の約3分の1しか調べていなかったのなら、全体の統計を計算する時には当然3倍にするべきですが、その処理をしなかったというのです。

大きな事業所のほうが、相対的に賃金が高いと思われます。単純に足し合わせれば、相対的に賃金が高い東京都の800人以上の事業所の3分の2が集計に反映されないことになっています。少し難しく言うと、500人以上の事業所の東京都分の抽出率の復元が行われていなかったのです。

その分、平均賃金は実際より低めに出てしまいました。これを基に雇用保険や労災保険の給付を算出したのですから、過少になってしまったのです。

さらに当初は、必要な復元を2018年1月分以降の調査分からしか行っていなかったといいます。この影響で、2018年1月から数字が高めに出ていた部分があるのです。これは一部の職員が認識していただけで、組織全体で共有していませんでした。これが第3の問題です。

問題をややこしくさせている原因

話がややこしいのは、2018年1月に499人以下の事業所の標本交替が行われたことです。

第二種事業所(従業員数5~29人)では、全18ヵ月を3等分し、6ヵ月ごとに3分の1ずつの頻度で標本交替する「ローテーション・サンプリング」を、これまでも実施しています。

一方、第一種事業所(常時30人以上を雇用する事業所)の標本交替はこれまで総入れ替えでしたが、それだとサンプルバイアスが大きいという問題がありました。そこで、第一種事業所にもローテーション・サンプリング(年1回の標本交替ごとに3分の1を交替する)を導入することになり、現在はその移行期に当たっています。

最後の総入れ替えは2015年1月でした。2年後の2017年1月では、1年延長のグループと2年延長のグループに半分ずつ分け、各々1年延長、2年延長としました。2018年1月には、さらに1年延長の事業所グループの3分の1を2年1ヵ月の調査期間のグループに入れ替え、3分の1の事業所グループを3年1ヵ月のグループに入れ替えました。

これによって、共通事業所のデータが公表できるようになったのです。ただし共通事業所のデータは、サンプルサイズが小さくなるという欠点があるため、あくまで参考値だと思います。これが真の値になるとはいえない点には注意が必要です。

(写真:ロイター/アフロ)

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