はじめに

中学受験に関する数字を森上教育研究所の高橋真実さん(タカさん)と森上展安さん(モリさん)に解説いただく本連載。

今年の中学受験も終わり、受験をした小学6年生もホッと一息。卒業式までの間、最後の小学校生活を満喫していることでしょう。

一方で、新6年生は受験まで1年を切っています。今年の入試もいくつか新しい傾向が話題となりました。気になるのは来年も新傾向は続くのかということ。そこで、今回は新傾向の中から「思考力入試」を取り上げます。

今回の中学受験に関する数字…1.3倍


入試のトレンドとして注目の思考力入試

<タカの目>(高橋真実)

1月からスタートした首都圏の中学入試戦線は、梅の花の便りとともに終わりを迎えました。模擬試験の状況を踏まえた予想どおり、今年の受験率は13.9%と、昨年より0.2ポイント上昇しました。

昨年から継続している大学付属・半付属校人気、午後入試や算数一科入試の増加など、今年もニュースの多い入試になりました。もう1つのトレンドとして注目されるのが、思考力入試の増加です。思考力入試実施校は昨年比で1.3倍に増えました。

2015年に文部科学省が高大接続改革実行プランで大学、高校、大学入試三位一体の改革を発表して以来、首都圏の私立中学はこの動きを先取りしてきました。アクティブラーニングを取り入れた授業改革、英語4技能を育成するための英語教育の強化。そしてもう1つの動きが、思考力入試の登場です。

今年はのべ5,000人あまりが挑戦!

思考力入試とは、文字通り受験生の思考力を試す入試です。入試方式は多種多様。公立中高一貫校が行っている適性検査型に類似した教科横断型の記述問題を課しているところもあれば、受験生が小学校時代に取り組んできた活動(例:スポーツや課題研究等)についてのプレゼンテーションを行うもの、グループワークや、与えられたテーマについて受験校の図書館で調べ学習的な活動を行うものなど、様々なスタイルの入試が行われています。昨年は、プログラミング入試も登場しました。

はじめのうちこそ受験生はあまりいませんでしたが、マスコミに取り上げられたりして認知度が高まったこともあり、今年は昨年比で1.5倍、のべ5,000人あまりの受験生が思考力入試に挑戦しました。

思考力入試を実施している学校の先生方にお話を聞くと、こうした入試を経て入学してきた子どもたちは、地頭のよい子が多く、入学してからの学習面でも期待が持てるのだそうです。

大学入試改革、教育改革に呼応するかたちで増えてきた思考力入試。なぜこれだけ増えてきたのか、そして今後の展望について、モリの目さん、教えてください。

2020年の大学入試改革が影響

<モリの目>(森上展安)

タカの目さんから振られた今回のお題は、いわゆる思考力入試がこれから一体どのくらい拡大を見せるのか見通しを述べよというものです。

タカの目さんもご指摘の通り、メディアの取り上げ方がすごいのは事実ですね。一体、入試の報道を見ていると、ことごとくそうなのですが、「変化」を追うがために変わらないものにニュースバリューを置いていない。風物詩として取り上げるけれども、しかしそこは「変化」を強調しています。

「変化」の本質は、2020年、2024年と続く大学入試の変化という受験生保護者や関係者の最大の関心事ですから、単なる変化と違って合否がかかり利害の生じる事柄ですから、勿論ニュースバリューはあります。

思考力入試は中堅校向け?

とはいえ、いわゆる中学入試で世間の口の端に上る有名校の出題がそんなに変化したという話は聞きません。

そのはずで、この思考力入試の導入校の多くは成績中位層をその対象としています。これらの中学入試は、一方でこれまでのような教科型の入試も実施してこの「思考力入試」もやるという両立です。

従って、1.3倍に増えておよそ5,000人の受験生規模になったというのも事実である一方、従来型は従来型で残されているのも事実です。

さてこの思考力入試の特徴はどこにあるでしょうか。それを考えるとこれからのこの入試の拡大の見込みに目処が立てられるかもしれません。

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