はじめに
いいビジネスアイデアを思いついたけど、いきなり会社を辞めて起業するにはリスクが大きすぎる……。そうやって、起業を諦めた会社員はどれくらいいるでしょうか。
終身雇用制度が崩壊しつつある最近では、「週末起業」という言葉にあらわれているように、会社員でいる間に少しずつ事業を行い、軌道に乗ったところで退職して会社を起こそうと考えている会社員が増えていてもおかしくはありません。副業解禁時代に入り、会社によっては、会社員が会社に居ながらにして会社を設立することも不可能ではなくなってきているからです。
そこで、今回は、会社員が退職しないで会社を設立するとどうなるのかについて、2回シリーズでお話したいと思います。
第1回は、会社を設立するときの注意点、会社を設立するのと個人事業主の違い、第2回は主に会社を設立する手続き、どの組織形態を選べばよいか(株式会社か合同会社か)についてみていきます。
会社員のまま起業する前にすべきこと
会社員が会社を設立する場合には、設立前に必ず勤務先の就業規則を確認しなければなりません。
就業規則とは、簡単にいうと、働くうえでのルールを勤務先が定めたものです。労働基準法に基づいて、常時10人以上の従業員がいる使用者は、就業規則を作成して所轄の労働基準監督局に届け出なければならないことになっています。
勤務先の就業規則に違反してしまうと、最悪の場合、懲戒解雇される危険があります。会社に居ながらにして会社を設立することが、起業のリスク軽減につながっているのに、会社員でいられなくなってしまっては本末転倒です。
届出をしていればOK、業務に支障がでなければOK、給料を受け取らなければOK、個人事業はいいけれど会社を設立するのはNGなど、会社の考え方によって、ルールは様々です。必ず就業規則を確認のうえ、上司や担当の課に相談するようにしてください。
個人事業か、会社設立か?
従業員が会社を設立することについて、就業規則上で問題がないことがわかったとします。次に検討しないといけないのは、会社を設立する必要があるのか? ということです。というのも、事業を営む方法には、大きく分けて次の2つがあります。
1.個人で事業を営む
2.法人で事業を営む
このうち、2の場合が、会社を設立するケースになります(なお、会社を買う場合も2にあたりますので、前回の記事を参考にしていただければと思います)。個人と法人の違いを表にまとめると次のとおりです。
表を見ていただくとわかるとおり、個人事業の方が、楽に始めることができます。ただ、設立当初からある程度の売上が見込める会社の場合や、社会的信用が重視されるような業種の場合は、会社を設立しておく方がよいでしょう。事業を運営していくにあたり、個人と法人のどちらを選択する方がよいのか、上の表を参考にしながら判断していただければと思います。
なお、会社設立の場合、株式会社にするのがいいか、合同会社にするのがいいかという組織形態について、どれを選ぶかというお話は次回に解説したいと思います。