はじめに
最大で10連休という今年のゴールデンウィーク。どこへ行っても混んでいるしと、行き先に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
しかし、都内では、増える訪日外国人観光客によって、その魅力が再発見された街があります。浅草や銀座、六本木などの有名な観光地ではない、意外なインバウンド人気の街の現状をレポートします。
数年前から増え始めた外国人の姿
JR日暮里駅東口から徒歩5分ほど歩くと、道路の両側に約1キロメートルにわたって90店以上の店並んでいます。生地、毛皮、ニット、手芸用品など、さまざまな専門店が店先に目玉商品を出し、「1メートル100円!」などという特売品に目移りします。
ここは国内最大級の繊維問屋街「日暮里繊維街」。街の歴史は大正初期にさかのぼります。
にっぽり繊維街の案内板
東京日暮里繊維卸協同組合によると、この頃に浅草方面で営業していた繊維業者が集団移転したのが繊維街の始まり。高度成長期の既製品の台頭や手芸ブームなど、繊維業界をめぐるさまざまな歴史を乗り越え、健在です。問屋街なので業者相手の商売が主ですが、多くのお店で小売りもやっています。
そんな街の風景が変わり始めたのは数年前から。和柄の生地や手芸用品を買い求める外国人観光客が数多く訪れるようになったのです。確かに取材に訪れた日も、街を歩く外国人の姿が目立ち、店頭や店内で真剣に商品を品定めしていました。
実は成田から36分の好立地
この街に外国人が増えたきっかけの1つは、2010年に京成成田空港線が開通し、成田国際空港から最短36分とアクセスが格段によくなったこと。また、日暮里駅の反対側には「谷根千」として下町の雰囲気を残す谷中・根津・千駄木といった地域があり、セットで観光ができることも人気を呼んでいます。
しかし、なにより最大の理由は、日本産の質の高い布が安価で買えることがインターネットや口コミで広がったことです。
繊維街の中で、客のほぼ100%が外国人という店がありました。繊維卸の有限会社「ミハマクロス」。「日本製和柄・着物ロンジー専門」という看板が掲げられていました。入口の引き戸を引き、年季の入った商店に入ると、草花や鶴、毬などがふんだんにあしらわれた艶やかな和柄の布がずらり。藍染風のシックな布もあり、次から次へと外国人が訪れます。
店内で品定めをしていたミャンマー人のレイさんに話を聞きました。レイさんは日本在住ですが、訪日中の親戚2人を連れて買い物中とのことです。「このお店はミャンマーでとても有名。ミャンマーでは日本の着物をみんな知っているから、日本に来ると和柄の布をお土産にします。日本のものは柄が良くて品質がいい」と話します。
買い物後には、それぞれが複数買い込んだ布を笑顔で見せてくれました。知り合いに配ったり、「ロンジー」と呼ばれる伝統的な巻きスカートを縫ったりするのだそうです。布は1枚2メートル単位で、安いもので数百円程度です。