「テストする女性のモノ批評誌」を標榜して創刊し、「テスト誌」という新しいジャンルを作った「LDK」。徹底的な消費者目線の誌面作りが評判を呼び、出版不況・雑誌不況の中、好調な売り上げを維持しています。

誌面では様々な商品を比較検証すべく、毎回専門家を招いて壮大な実験を行っていますが、この度ついに社内にラボを作ってしまったのだとか。

今回はマネープラス編集部が、2019年2月にオープンした検証専用テストラボ「LAB.360(ラボドットサンロクマル)」に潜入取材しました。


専門家を呼んで出版社内にラボまで設立

今回案内してくれたのは晋遊舎のLAB.360・松下和矢室長とLDK事業部部長兼LDK Web担当・木村大介編集長のお二人。

「LDKの創刊前は『女MONOQLO』なんて言ってたんですけどね」と振り返る木村さんは、同社の雑誌「家電批評」「MONOQLO」を経て、2013年の「LDK」創刊時から関わり、2018年創刊の「LDK Beauty」の編集長も務めた、ある意味「テスト誌畑」のエキスパート。「LDK」の部数は現在20万部で、雑誌業界の中では珍しく売れ行きを伸ばし続けています。

LDKの松下さんと木村さん

LAB.360・松下和矢室長とLDK事業部部長兼LDK Web担当・木村大介編集長

そのLDKが自社内に検証専用ラボを持ち、ここを中心とした検証作業を行うことを始めました。社内でも調査できるスペースはありましたが、「結構な額」(松下さん)を投資し、撮影もできる大掛かりなリノベーションを行ったのです。

このラボ、編集部員が片手間に回す施設ではありません。このラボの設立にあたり招聘した松下さんは、以前からLDKの製品評価の調査に協力していた商品検証機関出身の専門家。木村さんがダメもとで松下さんを誘っていましたが、ある日「来ちゃった」と松下さんがジョインしてくれたのだとか。

そこまで徹底的に作られたLAB.360には、どんなビジネスの種が潜んでいるのでしょうか。さっそくラボの中を見てみましょう。

先鋭的な機材とピタゴラスイッチのコラボ

「おしゃれな理科室をイメージしました」と木村さんがいうとおり、白くてまさに研究室!しかし、置いてあるものが…家電!

「さっきはトースターの調査をしていて。ムラなく焼けるかを検証していました」と松下さん。

サーモカメラで食パンの表面温度を確認してみると、トースターによっては中央が焼けていないなどムラができていることが画面上で分かります。もちろん、この温度を測るために、ラボ内にあるキッチン的なスペースにて、いろいろなトースターで延々と食パンを焼いていたことになります。数十万円のサーモカメラとパンを焼くという地道な作業の取り合わせが、消費者目線を忘れない「LDK」のラボらしさでもあります。

お次は美容系。どんと置かれたこの機械は、なんとお値段400万円だとか! 一体何をするものなの!?

「ここに顔を置いて計測すると、これから出てくるシミやシワがわかるんですよ」そんな恐ろしい機械が!

シミも皺も全てを映し出すマシーン

これは化粧品開発メーカーではメジャーな機器だそうですが、出版社ではまず見掛けない代物です。この機器を使うと、たとえば化粧品の保湿具合といった肌の状態や、あるいはマスカラやまつげ美容液が付着した長さなどの計測もできるそう。

また、使用後1カ月でどんな変化が起きたか、という検証をする場合には、数100人登録されている読者モニターにお願いし、ラボに足を運んでもらい、使用前・使用後を確認するとのことでした。

こんなに高性能な測定機器が並んでいる中、ラボにぽつんと置かれた手作りのピタゴラスイッチ的な工作器具。これはいったい……?
「これは包丁ピコピコマシーンですね」と松下さんがさらりと一言。

これが包丁ピコピコマシーン。2本の包丁を同時に動かすことも可能

包丁ピコピコマシーンとは、要するに「包丁をひたすらまな板の上で往復させる機械」のこと。

包丁の耐久性を測る際、金属などを用いて包丁を単純に傷めるのは簡単ですが、LDK編集部は「主婦は包丁をまな板の上で使うのだから、それでは真実に辿りつかない」とあえていばらの道へ。

その結果、「1日の料理のためにまな板の上で包丁を30回往復させると仮定して、2カ月使った場合の耐久性を検証すべき」と判断。その結果、1本の包丁を30回×60日=1800回まな板の上で往復させることに。

しかし、松下さんも生身の人間です。手作業で検証していては雑誌の締め切りに間に合いません。そこで、何十本もの包丁を1800回往復させるために開発(?)したのが、この「包丁ピコピコマシーン」というわけなのでした。

そうして、往復させた包丁について最新のマイクロスコープで刃こぼれを確認し、耐久性をチェックし、無事誌面が出来上がりました。

ちなみに、この実験の時期はほぼ終電で帰宅していた松下さん。妻から「こんな遅くまで何をやっているの?」と問われるたび、「まな板を切っていた」と答えていたそうですが、かえって心配になったのでは? とこちらが不安になってしまいました。

最新鋭の機器だけではカバーできない領域は、自力で機材を作るために知恵を絞るという松下さん。ラボのあちこちで松下さん作の機材や、それを組み立てる材料がしまわれています。

ちなみに、「松下さんは空いている時間はずっとなにか工作してます」という木村さんの証言もあり、もしかしたら「ただ工作が好きな人」の可能性も否定できません。