はじめに

経済状況による備えの違い 

しかしながら、これらの備えの実態には、経済状況(年収)による違いがみられます(図2)。

たとえば、備えを「特にしていない」と答えた人は、男女とも300万円未満の層では男性(左図)の約半数、女性(右図)の3割を占めます。雇用の面では比較的安定している正規雇用者のなかにも、将来の備えを行っていない(行えていないと感じている)人が一定割合を占めているようです。

一方、「財産形成」と「体力の増進や健康の維持」をあげた人の割合もおおむね右上がりの線になっており、年収の高い層に比べ低い層では回答割合が低くなっています。

また、年収300万円未満の男性では将来の備えとしての「財産形成」を行っている人が2割を下回り、女性に比べ特に経済面の備えの脆弱さが目立ちます。

図2 正規雇用で働く中高年シングルが将来への備えとして「財産形成」「体力の増進や健康の維持」を行っている割合と「特に何もしていない」割合(性・年収別)<3つまでの複数回答>

「経済面」と「経済面以外」からみた備えの4タイプ

最後に、「経済面」と「経済面以外」の備えのバランスという点に注目して今回の結果をみてみましょう。

図3は「経済面」と「経済面以外」の備えを双方行っている人(バランス型)、「経済面」の備えは行っているが「経済面以外」の備えは行っていない人(経済先行型)、「経済面」の備えは行っていないが「経済面以外」の備えは行っている人(経済以外先行型)、いずれも行っていない人(無防備型、図1の「特にしていない」の回答者)の4グループに分けて男女別にその分布をみたものです。

正規・女性では「バランス型」が半数超え

これをみると、男女とも最も多いのは「バランス型」で、男性では約4割、女性では半数超を占めています。正規雇用者として働く中高年シングル女性では経済面にとどまらない備えを幅広く行っている人が多くなっています。

また、年収300万円未満の男性を除くと、男女とも「経済先行型」が2~3割程度を占めています。このなかには今後、経済面とともに、経済面以外の備えの重要性が高まる人もいるかもしれません。

図3 中高年シングルにおける将来への備えのタイプ(就労形態・性別)<複数回答>

出典:第一生命経済研究所「中高年単身者の生活実態に関する調査」

「経済面」と「経済面以外」の備えのバランスを 

日本人の平均寿命は、いまや男性81.09年、女性87.26年に達しています。長期化する老後に備えていくには、計画的な資産形成(資産寿命の延伸)が不可欠であり、1人暮らしの中高年シングルにとってはよりいっそう重要になりそうです。

このようななか資産寿命を補強する最も心強い対策は、年齢にかかわらず、できるだけ長く働き続けることでしょう。加えて長い将来を見据えれば、加齢にともなう身体・認知機能や就労能力の低下を補うため、心身の健康の維持・増進やスキルアップなど経済面以外の備えについてもバランスよく考えていくことが求められます。

こうした視点で今回の結果をみると、中高年シングル男性ではまずは経済面の備えを、「経済先行型」の男女では、健康づくりやスキルアップなど経済面以外の備えについて、バランスを意識した備えを行っていくことも重要になるのではないでしょうか。

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