はじめに

5月20日に発表された1~3月期の実質GDP(国内総生産)の事前予想は「マイナス成長」か「横ばい推移」というものでした。1週間前の5月13日に発表された3月分景気動向指数の機械的判断は、6年2ヵ月ぶりに「下方への局面変化」から「悪化」に下方修正されていたこともあり、GDPも悪いはずだと思われていました。

「悪化」という判断は景気後退の可能性が高いことを示すので、この判断になったことで景気後退説が一部に広まりました。「景気は、緩やかに回復している」とし、景気拡張期間が74ヵ月と戦後最長を更新した可能性があるとみた、政府の1月の月例経済報告での判断との違いが注目されています。

1~3月期の実質GDPの結果は前期比年率+2.1%成長と予想外の2四半期連続のプラスとなりました。+2%台の高めの成長率を予測した向きは皆無でした。なぜ予測は外れたのでしょうか。また本当の景気の状況はどうなのでしょうか。


各需要項目の変化方法は予想通り

まず今回のGDPの内容をざっと眺めてみましょう。

2019年1~3月期の実質GDP成長率・第1次速報値は前期比+0.5%、前期比年率+2.1%となりました。事前予想では「マイナス」か「横ばい」という見方が多かったので、表面的な数字はポジティブ・サプライズです。しかし、各需要項目の変化の方向という点では、おおむね事前の予想通りでサプライズはありませんでした。

GDP

「個人消費」「設備投資」「輸出」といった主要項目は事前の予想通り、前期比マイナスという厳しい内容になっています。中国経済の減速などの影響が出ている「輸出」は前期比▲2.4%の減少です。

一方、消費税率引き上げ前の駆け込みの出ている「住宅投資」と国土強靭化対応の投資が出た「公共投資」は、予想通り前期比プラスとなりました。GDPでは控除項目である「輸入」の前期比が▲4.6%と大幅マイナスだったので、外需の寄与度は+0.4%と4四半期ぶりのプラス寄与になりました。

「輸入」減がGDP押し上げ

1~3月期のGDPを見る時に注意する点があります。

まず「輸入」の減少はGDPを押し上げるということです。GDPは「個人消費」「設備投資」「公共投資」などの内需と、「輸出」など外需を合わせたものです。外需は「輸出」から控除項目として「輸入」を引きます。「輸入」は海外で作られたモノやサービスを買うので、国内でモノやサービスを生むことにならないためです。

1~3月期のように「輸出」の前期比が▲2.4%と減少でも、控除項目である「輸入」の前期比が▲4.6%と大幅な減少で寄与度が大きくなれば、外需はGDPを押し上げることになります。1~3月期では外需の寄与度は+0.4%と大きなものになりました。

ただし、「輸入」の減少は内需の弱さを反映したと考えられるので、外需の寄与度の大きさを素直には喜べません。

第2に、GDP統計では季節調整を新しいデータが出るたびにかけ直していて、前四半期までの伸び率がそのままであるわけではないことです。

1~3月期では、「個人消費」は前期比マイナスと低迷したものの前期比は▲0.1%と、類似統計の消費総合指数が同▲0.2%であったことと比べると小幅なマイナスでした。年率換算ベースだと+0.4%程度(GDPに対する前期比年率寄与度だと+0.2%程度)高めに出た可能性があります。

10~12月期は前回の発表では前期比+0.4%でしたが、今回は+0.2%と低い伸び率になりました。前期の山が低くなれば、今期の落ち込みは小幅になるわけです。

「設備投資」の10~12月期の前期比も+2.7%から+2.5%にやや低下しています。なお、「設備投資」は前期比▲0.3%と、事前に予想されたよりも小幅な減少になりました。改元や消費税率引き上げ対応のソフトウェア投資などがしっかりしているのではないか、と推察できます。

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