はじめに

「輸入」の大幅減をどう読み解く?

一方、逆の動きになったのは「輸入」です。前期比▲4.6%と大幅なマイナスになりましたが、10~12月期は+3.0%と、前回の+2.7%から+0.3%ポイント高くなった反動も影響した感が強いのです。

そもそも2018年の輸入の前期比を見ると、1~3月期+0.7%、4~6月期+1.0%、7~9月期▲1.0%、10~12月期+3.0%と、年後半に振幅が大きくなっています。7~9月期は9月の台風の影響で船が入港できず10月にずれ込んだ影響なども出ているようです。10~12月期が自然災害で高めになった反動が、1~3月期の大幅マイナスの要因になっている面もありそうです。

4~6月期以降の先行きについては、改元によるプラス効果が期待され、消費税率引き上げの駆け込み需要が期待される「個人消費」や、国土強靭化対応の「公共投資」は成長率を下支えするでしょう。足元の内需は底堅そうです。

米中貿易摩擦の行方が懸念される中、足元の外需は厳しい状況が続きそうです。しかし、米中貿易摩擦の動向が小康状態になれば、中国景気が政策効果もあり年後半には持ち直すでしょう。また、情報関連財の調整が終了すると思われます。このため、年後半には外需の持ち直しが期待されます。

「設備投資」は日銀短観2019年3月調査の計画の底堅さがそのまま出るか、2018年10~12月期以降の機械受注統計の弱さが出てくるか、足元の動きが注目される局面です。

2019年度成長率見通しはやや上方修正か

2019年度の政府経済成長率見通し+1.3%程度の達成には、各四半期で前期比年率+1.3%(前期比+0.32%)になることが必要です。2019年1~3月期が前期比年率+2.1%だったので、2018年度から2019年度へのゲタは+0.5%になりました。

「ゲタ」とは、前年度の最後の四半期の水準を前年度の平均水準で割った伸び率を指しています。このことはかなり重要な点だと思います。

ESPフォーキャスト調査5月調査では、2019年度実質GDPが成長率の平均が+0.5%でした。これは新しいGDPデータに当てはめて考えると、今年度各四半期がゼロ成長で達成できることを意味する伸び率になります。

もしエコノミストの平均値が引き続き緩やかな若干の成長を見込むのであれば、ESPフォーキャスト調査6月調査での2019年度の成長率見通しの平均がやや上方修正される可能性が出てきたと思われます。

第2次速報値の留意点は?

6月10日に発表される1~3月期の実質GDP第2次速報値は、6月3日の法人企業統計の発表を受けて、「在庫投資」や「設備投資」を中心に改定されます。法人企業統計では、「在庫投資」の伸び率は名目の前年同期比で発表されます。

GDPの第1次速報値では、在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.4%でした。この内訳に関しては、内閣府からは雰囲気しか教えてもらえませんが、プラス寄与の大きい順に原材料在庫、流通品在庫、製品在庫で、仕掛品在庫はマイナス寄与となっているもようです。仮置き値の原材料在庫、仕掛品在庫が、法人企業統計でどう出てくるかが注目されます。

また、「設備投資」に関しては、供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+4.5%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+25.9%であると公表されました。需要側統計の法人企業統計にそのまま伸び率を当てはめると、前年同期比+3.4%になるので、10~12月期の同+5.5%よりは伸び率が鈍化していることを意味します。

実際には他の要素もあるので幅をもってみることが大切ですが、法人企業統計が出た時に前年同期比が+3.4%程度より高いかどうかを比較することは、1~3月期実質GDP成長率・第2次速報値での「設備投資」が上方修正されるか下方修正されるかを事前に予測する時の参考になります。

この記事の感想を教えてください。