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サントリー「ボス」、高級豆コーヒーでイエナカ消費を狙うワケ

既存のボスと何が違う?

「働くひとの相棒」というコンセプトで、缶コーヒーを展開するサントリー「ボス」。ここ数年、ペットボトル飲料の「クラフトボス」を投入し、若年層や女性層の需要を開拓してきましたが、新たに家庭向けの中容量ペットボトルコーヒーを発売しました。

職場で飲むイメージの強い同ブランドが、なぜ家庭向け商品を投入したのか。サントリー食品インターナショナルが開催したボスの戦略説明会の内容から、その背景を探ります。


既存のボトルコーヒーへの不満から誕生

同社が5月28日から販売を開始したのは「プレミアムボス コーヒーハンターズセレクション」。750ミリリットル入りで希望小売価格は298円(税別)と、競合のボトルコーヒーと比べてやや高めの価格設定です。

商品を開発する際に着目したのが、既存の中容量ボトルコーヒーの味に対する消費者の不満です。同社のジャパン事業本部 ブランド開発事業部の大塚匠課長によると、春・夏に中容量ボトルコーヒーを飲用する人の流入元の約6割が、秋・冬はレギュラーコーヒーを飲んでいた層といいます。

「家庭でレギュラーコーヒーからアイスコーヒーを作るのは『手間がかかる割に、おいしく作れない』というのが消費者の本音。レギュラーコーヒーのユーザーは手軽さから夏場はボトルコーヒーに切り替えていますが、『手軽さと味わいの本格感の両立』に対しては要望がありました」

こうしたニーズに応えるためにタッグを組んだのが、コーヒー豆の輸入・販売を手がけるミカフェートの代表で、「コーヒーハンター」として知られる川島良彰社長。ミカフェートは主にコーヒー豆の見極めや、産地とのコミュニケーション、原料を輸送・保管する流通システムを担当しています。

通常のコーヒー豆の輸送と何が違う?

「プレミアムボス コーヒーハンターズセレクション」は品質を高めるために、コーヒー豆の定温輸送を実現。ミカフェートの川島社長によると、国内に持ち込まれるコーヒー豆は温度管理できない「ドライコンテナ」の利用がほとんど。しかし、中南米から1ヵ月以上かけて輸送する過程でコンテナ内の温度は60度以上になり、「取返しがつかないぐらい劣化」するそうです。

サントリー食品インターナショナルの大塚匠課長とミカフェートの川島良彰社長
サントリー食品インターナショナルの大塚匠課長とミカフェートの川島良彰社長

同商品に使用するコーヒー豆はすべて、温度管理ができる輸送方法で持ち込みました。「日本のコーヒー業界の常識の壁を破ることをサントリーにお願いした」(川島社長)。これに大塚課長は「むっちゃ金がかかってます」と笑います。

試作品ができ上がるたびにダメ出しするなど味作りを一緒にして、サンプルの数はゆうに100は超えたそう。「どんどん研ぎ澄まされた味になり、今までのRTD(フタを開けて、すぐにそのまま飲める飲料)にない驚きの味に至った」と川島社長は胸を張ります。

「コーヒーはRTD化の余地が大」

これまで「ボス」は家庭外での飲用シーンを主戦場としてきました。中容量ペットボトルコーヒーで「イエナカ」消費を狙う背景には、何があるのでしょうか。

サントリー食品インターナショナルによると、国内のコーヒー総消費量の6割が「イエナカ」の332億杯。「イエソト」の218億杯を上回ります。また、家庭内の1週間当たりのコーヒー飲用杯数は6.89杯で、10年前と比べて8%増加しています。

さらに緑茶に目を向けると、消費量ベースで8割がすでにRTDなのに対し、コーヒーはまだ3割にとどまるため、RTD化の余地が大きいと同社は分析しています。

イエナカ消費を狙う戦略の根幹にあるのは、変化する消費者の働き方への対応です。共働き世帯の増加を背景に、テレワーク導入率の向上など、働く場所や時間が多様化。そうした中で「家でコーヒーを飲む機会が増える」と同社は予想します。

そこでキーワードとするのが「時短+豊かさ」。節約して生まれた時間を利用して、豊かに過ごすという考えです。イエナカのボスを「“家でも慌ただしい”現代の働く人の課題を解決」する商品と位置づけました。

従来のボトルコーヒーと比べてやや高価格な同商品。ユーザーから実際に受け入れられるのでしょうか。アイスコーヒーの消費が本格化する夏の売れ行きが試金石となりそうです。

<文:編集部 小島和紘>

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