はじめに

貿易戦争や世界景気悪化の不安から、世界的に株が売られてきています。強気だった人が段々弱気に転じつつあります。

一方、PER(株価収益率)や配当利回りなどの株価指標から評価した日本株は、とても割安になっています。裁定買い残などから推定される投機筋の買いポジションは、歴史的な低水準まで低下しています。

足元、世界景気は悪化しつつありますが、私はこれから起こる可能性がある悲観シナリオのかなりの部分は、株価に織り込み済みと考えています。こんな時は、株を少しずつ買っていったら良いと考えています。

とはいっても、短期的に日経平均株価がどこまで下がるかはわかりません。こんな時は、まず大型の高配当利回り株から買っていったら良いと考えています。そこで、配当利回り4~6%で、かつ、株主優待が個人投資家に人気の銘柄をご紹介したいと思います。


言うは易し、行うは難し

株は、安い時に買い、高い時に売ると利益が出ます。これは、言うのは簡単でも、やるのはとても難しいことです。なぜならば、株が安い時は世の中に悲観が広がっているからであり、株が高い時には世の中が明るくなって、皆が楽観的なことを言っているからです。

安い時に買い、高い時に売ることができるのは、みんなが悲観的になった時にコツコツと株を買い、みんなが楽観的になった時に少しずつ売っていくことのできる人です。みんなと一緒に悲観的になり、一緒に楽観的になる「素直な人」は、いいタイミングで株を売買できません。

私は過去25年間、日本株のファンドマネージャーをやってきましたが、ちょっとひねくれていて、いつも大衆心理のウラを読もうとしていました。今もそうです。

個人投資家の中には、優待の魅力だけで投資銘柄を選ぶ方もいます。ただし、優待で人気の銘柄には、配当利回りの低い銘柄がたくさんあります。一方、配当利回りが高い銘柄には、優待を実施していない銘柄が多数あります。

優待だけを見て銘柄を選ぶのは、合理的な投資とはいえません。意外と少ないのが、優待も配当利回りも魅力的な銘柄です。

ただし、優待投資も利回り狙いの投資も、株式投資である以上、業績や財務内容は必ず見るべきです。今回ご紹介する3銘柄は、予想配当利回り4~6%、財務内容が良好で収益基盤が比較的安定していると、私が考えている銘柄です。

不人気だけど魅力的な銘柄

日本たばこ産業(JT)は、12月期決算銘柄です。中間決算期末(6月末)と本決算期末(12月末)に、配当金と株主優待品を得る権利が確定します。予想配当利回りは、6月6日時点で6.2%です。

同社株は株式市場で不人気です。国内の喫煙者減少が不安材料となっているほか、飲食店での受動喫煙を減らすための規制が強化されつつあることが逆風だからです。

しかし、私は安定高収益の好配当利回り株として評価しています。同社の魅力は、財務内容良好で、利益率が高く、買収巧者であることです。喫煙者が増加している新興国でたばこ会社を次々と買収し、利益を成長させてきました。増配や自社株買いに積極的であることも、評価できます。

また、国内のたばこ事業は、喫煙者が減っても、継続的に値上げすることで、収益を維持してきました。少数事業者が独占的に供給している製品では通常、一方的な値上げは独占禁止法の観点から認められません。たばこ製品は事実上、その例外となっていると考えられます。

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