はじめに
「最初は半信半疑」も期間延長
オアシススタイルウェアが最初にアバハウス原宿店でウエアを販売したのは、今年3月。同社が展開するアパレルライン「YZO(ワイゾー)」と「M・N・T(エム・エヌ・ティ)」を期間限定で置いたところ、計画の4倍以上を売り上げました。
「正直、最初は売れるのか半信半疑でした」と打ち明けるのは、アバハウスインターナショナルの広報部です。アバハウス原宿店の主な顧客層は、35歳以上のファッション感度の高い男性。「ワークウエア」を前面に打ち出しているスーツがどこまで受け入れられるか、予測できませんでした。
それでも始まってみると、期間限定店は予想を超える反響がありました。そこで当初の予定より期間を1週間延長し、さらに札幌や福岡など全国の店舗に期間限定店を広げました。広報部は「機能やデザインをはっきりと打ち出すことで、ファッション感度の高い人にも受け入れられた」と振り返ります。
WWSはどのような機能があるのでしょうか。夏用ジャケットは、裏地を付けずに軽く仕上げて、部屋干しでも3時間で乾きます。パンツには、小物がたくさん入るジップ付きの深いポケットやDカン(D字型の留め金)を付け、動きやすいように裾を絞ってあります。また、スポーツウエア向けに開発されたストレッチや防水性の高い生地を使っています。
ここ数年、ビジネススタイルの変化に伴い、メンズスーツ市場は伸び悩んでいます。ただし、その中でも機能性を重視したスーツは一定の需要があり、アバハウスのオリジナルブランドでもストレッチが効いたスーツはヒットしているそうです。現場で働く人に向けて作られたスーツ作業着は、機能性を求めるメンズスーツ市場に合ったといえます。
造り酒屋や中古車販売の現場でも
オアシススタイルウェアのスーツ作業着は、水道のメンテナンス事業を行う親会社が、社内のユニフォームとして作ったところ、取引先からの評判が良く、アパレル事業を始めたという、少し変わった経緯があります。
昨年3月にファッション通販サイト「ロコンド」で発売したところ、「スーツを着ている感じがしない」と注目を集め、一気に知名度が上がりました。「実際に試着してみたい」という声も多く、今年3月からは全国の百貨店で期間限定のショップを出してアピールしてきました。
機能性の高いウエアに注目し、個人に加えて企業からのオーダーも増えています。接客しながら作業もする中古車の販売業や、造り酒屋、マンションの管理業務など、業種もさまざまです。
人手不足のために「格好良いユニフォームで採用を増やしたい」という企業側の狙いもあり、これまでの導入件数は200件を超えました。東京オリンピック・パラリンピックを前にユニフォームを変える企業も多く、今後受注が増える可能性もあります。
作業服がブランド力を持つ時代に
こうした動きに、高級紳士服を扱う百貨店のバイヤーも注目しました。6月下旬からは、埼玉の伊勢丹浦和店の紳士服フロアでも販売が始まります。
「YZO」はIT企業の30~40代がターゲット
スーツ型作業着の平均価格は上下セットで3万円ほど。10万円を超えるスーツも珍しくない百貨店からのオファーに、オアシススタイルウェアの担当者は「顧客の幅を広げる絶好のチャンス」と意気込みます。百貨店に買い物に来るファッション好きの人にも手に取ってもらえるかが勝負になりそうです。
最近は「ワークマンプラス」を展開するワークマンのように、作業服メーカーがデザイン性の高いウエアを作り、一般の顧客を獲得するケースもあります。作業服がブランド力を持つ時代が近づいているのかもしれません。