はじめに
ヒルバレーの復調を支えるOEM
ヒルバレーの店舗は現在、創業の地である中目黒の本店、東京、大阪・梅田、札幌の各大丸百貨店内の計4ヵ所だけですが、OEM(相手先ブランドでの受託生産)供給を積極化。ピークアウトした2015年付近と比較して一時期は半分近くまで落ち込んでいた売上高も、2015年当時の7割くらいまで回復しています。
OEMは、供給先のブランド名で露出するうえ、基本的に供給先がOEMの供給元を明かしません。供給元にも供給していることを公表しないよう求めます。ヒルバレーも同様で、実名をここに記載できないのですが、昨年からかなり大口の供給先を複数獲得しています。
ちなみに、よく耳にする「グルメポップコーン」という呼称、実はヒルバレーが商標登録しています。一般的には「プレミアムポップコーン」という呼称が使われていたので、そのさらに上を行くのだという思いが込められているのだそうです。
高級ポップコーンの草分けであるヒルバレー(左)とギャレットのパッケージ
一方、ギャレットはピーク時でも6店舗しか出店していません。すべて店舗内のバックヤードで製造するため、出店可能な物件が限られていたことが原因です。このうち1店舗は2016年に閉店。現在は1号店の原宿、東京駅1番街、JR名古屋高島屋、大阪のららぽーとEXPOCITY、酒々井プレミアムアウトレットの5ヵ所で展開しています。
ブームのピーク時でも店舗数が限られていたため、当時は欠品が常態化していました。逆に言えば、ピーク時の売り逃しが多かった分、ピーク時からの減収幅も3割程度に留まっているようです。
ギャレットは米本社の直営に
ギャレットブランドのポップコーンは、上陸時から昨年10月までの間、カルビーとペプシコの資本提携の一環で、カルビーの100%子会社となっているジャパンフリトレーが、米国のギャレット本社からライセンス供与を受けて製造・販売していました。
しかし、ギャレット側が望むペースで経営資源を割いてもらえなかったため、昨年10月、米国のギャレット本社の直営に変わりました。
OEMでの展開は考えておらず、「結婚式の引き出物や中元・歳暮市場への参入を狙っている」(ギャレットジャパン広報)のだそうです。名古屋の店舗が高島屋の店舗内にある縁で、名古屋高島屋の中元・歳暮には採用されています。出店も再開したい考えです。
ギャレットによれば、日本は高級ポップコーンの世界でもガラパゴス化した市場で、季節ごとに期間限定のフレーバーを投入したり、缶容器のデザインも変える必要がある、希有な市場だそうです。
このため、缶をコレクションするファンもいるようです。2017年、2018年は、プロ野球セ・リーグ6球団バージョンの缶も投入しています。6球団とも、球団側がまったく告知をせず、販売もギャレットの5ヵ所の店舗に限られていたため、知らなかったプロ野球ファンも多かったはずです。
定番化のお手本は●●?
余談ですが、実は日本古来のお菓子にも、マッシュルーム型のポップコーンとよく似た、ポリコーンというお菓子があります。スーパーでは煎餅などの棚によく置いてあります。
原料は高級ポップコーンとはまったく違い、直径が2センチメートル近くある大粒のトウモロコシです。これを圧力釜を使って膨らませて、やはり表面にキャラメルソースなどをコーティングしています。
日本に定着しているポリコーン
作り方は高級ポップコーンとよく似ていますが、高級ポップコーンは表面に細かい溝があって、そこにもソースがしっかり浸透しているのに対し、ポリコーンは表面がツルツルしています。そのせいか、コーティングも薄く、食感も高級ポップコーンに比べるとだいぶ軽くなっています。
日本人にはポップコーンは定着しないという説を唱える専門家もいますが、ポリコーンが地味に長く愛されてきたことからすると、そうとも言えなさそうです。
日本生まれのヒルバレー、日本独自の路線を模索するギャレット。ブームが去り、淘汰が進み、生き残ったのが草分けの2強です。ブームの時は手に取ったけれど、しばらくご無沙汰しているという方も、あるいはまったく食べてみたことがない方も、機会があれば手に取ってみてはいかがでしょうか。