はじめに

道路や周辺の工事などで、警察官ではない交通整理員が道路の片側を止めるなどして、行く手を阻んでくることがあります。

これは工事の円滑化と、道路を安全に通行するために取られている措置ですが、不手際などで走行をストップされ「早くしてよ!」と感じた経験を持っている人もいるはず。

もちろん整理員の指示に従うことは大前提ではあるのですが、不手際が明らかな場合、無視したくなることもあります。

このような場合、何らかの交通違反になるのでしょうか? 弁護士法人エースの竹内省吾弁護士にお聞きました。


交通整理員に従わねばならないの?

竹内弁護士:「交通整理員の指示に従う法的義務はありません。ミラーやバックモニターのように、運転者が安全を確認する一手段にすぎません。

逆にいうと、安全運転の責任は、運転者に委ねられているということになります。交通整理員が明らかに間違っていると感じた場合には、当然、その指示に従ってはいけません。

交通整理員に似たものとして、警察官等による交通整理がありますが、これは、道路交通法上、公道を走行する際には従わなければいけないので、注意が必要です」

工事など、私設と思われる交通整理員の指示については、「従わなければいけない」という法的義務はないようです。

従って事故を起こした場合は?

従う法的義務がないことはわかりました。しかし、実際は殆どの人が交通整理員の指示に従っているはず。また、工事など交通事情を考えると、従うことが望ましいことは言うまでもないでしょう。

仮に交通整理員に従い、事故を起こしてしまった場合、賠償などの責任を問うことはできるのでしょうか? 弁護士法人エースの竹内省吾弁護士にお聞きました。

竹内弁護士:「交通整理員の指示内容・方法によっては、交通整理員も賠償責任等を負うことはありますが、運転手の責任がゼロになるということは、基本的にありません。指示を受けた上でそれに従うかどうかの決定は、運転者の判断に委ねられているからです。

法的に義務がないとはいえ、慣習的には、交通整理員の指示に従うことが一般的ですので、交通整理員の誤導により事故が生じた場合には、法律的には、運転手と交通整理員の過失が合わさって生じたものとして、共同不法行為として、双方責任を負います。その場合の責任の割合は、ケースバイケースとなるでしょう」

明らかに間違っている場合は運転手が判断

交通整理員の指示は基本的には従ったほうが望ましいものですが、従わなくても法的には問題がありません。

「明らかに間違っている」と感じた場合は、自分の判断を優先したほうがいいかもしれません。

ただし、無視をして事故を起こした場合は、当然自己責任となりますので、慌てず安全運転を心がけましょう。

取材協力弁護士:竹内 省吾(弁護士法人エース。企業法務・交通事故・不倫問題・残業代請求をはじめ、多岐分野に対応。弁護士とパラリーガルの緊密な連携により最短ルートで最善の解決へ。)

取材・文:櫻井哲夫

(この記事はシェアしたくなる法律相談所からの転載です)

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