はじめに

2013年、FacebookのCOOであるシェリル・サンドバーグが『LEAN IN』という本を出版しました。“Lean in”とは、一歩踏み出すこと、挑戦することを表す言葉です。

サンドバーグは本の中で、女性が野心を忘れずに挑戦し続けていくためにはどうすればいいのかを記しています。さらに彼女はLeanIn.Orgという団体を立ち上げ、コミュニティを通して女性が挑戦しやすい社会を実現させることを目指しました。この活動はいまや世界中に広がり、154か国に30,000ものサークルが立ち上がっています。

そのなかで日本唯一の“Regional Leader”、つまり地域代表として活動している「Lean In Tokyo」が毎月開催している講演会が「Professional Woman ゲストスピーカーイベント」です。

2月のゲストはエコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さん。自身の経験から女性が野心を持ってキャリアを積んでいくために必要な要素について語ってくれました。


女性が活躍するために必要な3つの要素

崔さんは現在、Good News and Companies代表、日経CNBC経済解説委員、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員、エイボン社外取締役と、華々しく活躍されています。

「私は今、4つの肩書のもとで、主に経済メディアを中心に活動しています。よく知られているのは、日経CNBCという日経とテレビ東京が出資して設立された放送局の経済解説員としての顔でしょう。ありがたいことにレギュラー番組が7本、またこの春から冠番組が始まることになりました。

ただ、エコノミストは本来、学者としてアカデミックな研究をするべき存在です。昭和女子大学の非常勤講師を務めることで、新たな知識を蓄え、分析力を養うことにも取り組んでいます」(崔さん、以下同)

個人として多くの仕事をこなしている崔さんですが、自身の経験から女性が独立や起業して出世を目指すとき、重要だと感じる要素が3つあると言います。

1:魅力的な人と積極的につながること

「私自身がそうなのですが、仕事は人づてに舞い込んでくることがほとんどです。だから、人とのつながりを大切にすることはとても大事です。とくに、すでに多くの人とのコネクションを持っていて、かつその人自身に周囲を引きつける魅力がある人とつながっておくことがよいと思います」

とはいえ、どのようにすれば仕事につながる人脈を手に入れられるのでしょうか。

「“ぜひつながりを持ちたい”と思う人に出会ったとき、活用してほしいのが『エレベーターピッチ』という方法。たとえば、エレベーターの中でそんな人と出会ったとしても、会話に使える時間は30秒程度。その短時間の中で相手に自分をどれだけ印象付けられるかが勝負なんです。30秒で落とせる殺し文句を持っておくと、とても役立ちます」

実際に崔さんは、自分の失敗談を話すことで相手に強い印象を残すようにしているんだとか。

「私がいつも使っている殺し文句は、『ミャンマーで事業に失敗した』話です。新卒で入社した証券会社を辞めたあと、実は、当時民主化されたばかりのミャンマーで新しい金融の仕組みを作ろうと現地に渡ったんです。ただ、なかなか思うようにいかず結果は失敗。貯金も失って、大きな痛手ではありましたが、この失敗談を話すと多くの方が“なにかおもしろい人がいるぞ”という印象を持ってくれるんです」

崔さんは、この自分にキャッチコピーをつける手法を新卒の就職活動のときも駆使したそう。

「実家は焼肉屋を経営していて、親戚も商売をしている人ばかりだったので、よく投資の話が話題にのぼっていました。経済学を志したのも、育った環境の影響が大きいと思います。そんな背景もあって、大学生のときは株式投資がしたくてたまらなかったんです。

でも元手はないし、バイトでコツコツ貯めるのは効率が悪い。そこで、阪神タイガースのグッズを扱うネットショップを立ち上げました。それが思いのほかうまくいって、投資のための元手が集まったんです。このエピソードは、就活のときにかなり役立ちました」

崔さんによると、自分だけのキャッチコピーを作るためにはまず、自分の人生を振り返ってキャッチーなことをどんどん書き出していくといいと言います。そのとき、電車の中吊り広告を参考にすると、印象に残るコピーを考えるうえでとても役立つそう。

2:アカデミックな知見を身に着ける

「また、私がエコノミストとして多くの経済メディアに出演できているのは、そもそも女性のエコノミストが少ないという背景があるからだと思います。女性が少ない環境は、働き方のサポートを受けられないというマイナス面もありますが、その環境でなければつかめないチャンスもあるんです」

実際にエコノミストとして独立してから、まだまだ男尊女卑がまかり通っている状況を目の当たりにしたという崔さん。だからこそ、男性社会のなかで自分がプレゼンスを発揮するためにはどうしたらいいかを深く考えたと言います。

「コメンテーターとして活躍している男性エコノミストの方が苦手そうな部分を、自分の武器にしようと思いました。そして必要なのは、“アカデミックな知見”です。男性コメンテーターの発言に反論するときに、ただ自分の意見を述べるだけでは男尊女卑に勝てないんです。

でもそこに、『最新の〇〇という論文によると』『〇〇という研究所が出したデータをみると』と、アカデミックな論拠を示すと、とたんに黙ってしまう。女性が男性社会で成果を上げたいと思ったら、アカデミックな知見に頼ることも効果的だと思います」

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