はじめに
男性は結婚すると“損”をする?
晩婚化や未婚率の上昇が叫ばれる今日、男性からみると「結婚はコストパフォーマンスが悪い」という話が度々話題にのぼります。
婚活のための費用や彼女とのデート代、婚約指輪に結婚式、子供の教育費用……と確かに恋愛や結婚には、さまざまなお金がかかります。もちろんこれらの費用は夫婦が共に準備するものですが、男性にその荷が重くかかりがちなのも実情。
やはり結婚は男性にとって、コスパが悪い制度なのでしょうか?
結婚するのは恐ろしいこと?
“結婚相手選びは株式投資と同じ。夫婦は、ゼロサムゲーム=お互い食うか食われるかの関係にある。”
2月に新潮社から発売された『損する結婚 儲かる離婚』という本が話題を呼んでいます。
著者は外資系金融機関を経て、作家として活動する藤沢数希氏。結婚と離婚によって実際にどのようにお金が動くのか。大人の男女の間にうごめくマネーゲームについて、経済と法律の観点から明らかにします。
金融工学的な視点からみると、所得が高い男性にとっての結婚や離婚が、いかに“リスク”となるのか。判例をもとにした藤沢氏の明快な解説には納得されられる部分が多くあります(女性のほうが高収入の場合は男女逆のリスクが発生するとのただし書きも)。
今の時代、未婚の男性のなかには、結婚すると「奥さんや子供のための生活費も稼がなければいけなくなる」ので、「自分が自由に使えるお金が少なくなってしまう」と考える人もいるでしょう。そして、もし離婚となれば慰謝料、財産分与、婚姻費用が発生し、「男性は損をしてばかり」。
こんな理由を述べて、結婚を躊躇する“コスパ主義”の男性によるボヤキがインターネットなどでよく見かけられますが、実際に結婚を「損得」で考える人の増加が未婚率上昇にも影響しているのでしょうか。
「結婚したい」派が大幅減少
そのヒントとなりそうなのが、昨年6月に明治安田生活福祉研究所が発表した「2016年 20~40代の恋愛と結婚」調査レポート(Web調査。回収数3,595人)。
「できるだけ早く結婚したい」「いずれ結婚したい」と考える男性は、20代では38.7%、30代では40.3%と、3年前の同調査と比べてみると、特に20代で約30%減と大幅ダウンしていることがわかります。
一方で、「結婚したいと思う(思っていた)が、結婚しないと思う」と諦め気味な人は微増し、20代では13.3%、30代で15.7%。
加えて、「結婚したいとは思わない」と言い切る“嫌婚派”が、20代で20.3%、30代では24.7%と、こちらも増えています。
また、興味深いのが「わからない」派の大幅増。結婚はして当たり前のものではなくなってきた昨今、世にあふれる結婚にまつわる情報に振り回され、戸惑いを感じているような若者の思いが見え隠れします。
結婚を「コスパ」で考えたことがある?
また、「結婚をコストパフォーマンスで考えたことがあるか」という質問に対して、20~40代の既婚者では「考えたことがある」と回答した男性が28.9%だったのに対して、未婚者は37.9%。
この数字にはコスパで考えた結果、「結婚は金銭的にプラス」と結論づけた人も含まれますが、やはり未婚者のほうが“コスパ主義者”が多い数字になりました。
特に、結婚適齢期真っ只中の未婚30代男性においては、45.7%がコストパフォーマンスを意識。そして、結婚をお金で換算すると「マイナスである」と考える人は全世代の男女で一番多く、32.5%にもなりました。
ただ、ここで女性側の数字を見ると、「コストパフォーマンスで結婚を考えたことがある」20~40代の未婚女性は45.4%と男性以上に多いことがわかります。考えた結果、結婚は「お金には換算できない」という解を出した女性は男性より多いですが、金銭的な損得で結婚を試算してしまうのは、男性に限ったことではないようです。
婚活サービスは活況
このように結婚に対する意識が変化する一方で、2012年度には「街コン」が大ブームになり、新語・流行語大賞にノミネートされるなど、近年、敷居を下げた婚活サービスが盛況です。
2007年に「婚活」という言葉が誕生した以降、手頃な料金の結婚相談所や婚活パーティが多数登場し、若い世代を呼び込みました。
また、スマートホンの普及により、新しい出会いの場として脚光を浴びているのがSNS連動型の恋愛マッチングアプリです。登録にFacebookアカウントや身分証の提出が必須とされているため、サクラの心配が少なく、地域や趣味が近い利用者が安心して出会えるように工夫されています。
株式会社ネットマーケティングが運営する恋愛マッチングアプリ「Omiai」は、日本におけるマッチングアプリの先駆け的存在。2012年のサービスを開始から4年で会員数は右肩上がりで増加、180万人を突破しています。
同市場には大手企業も続々と参入。リクルートマーケティングパートナーズの「ゼクシィ縁結び」、サイバーエージェント子会社のマッチングエージェントによる「タップル誕生」、Tinder、Matchなど世界的なマッチングアプリを展開する米・IACグループ傘下となったエウレカの「pairs」など、その顔ぶれは豪華。各サービスも大きく利用者を伸ばしており、アプリを通じて「恋人ができた」「結婚した」という事例も身近に聞く珍しくない話となりました。
ネットマーケティングの担当者は、「大手企業が多数参入することによって、オンライン上での出会いへの認知度が上がり、潜在利用者層が拡大しています」とマッチング市場全体の成長に対し、ポジティブな印象を語ります。
このようなサービスが盛り上がる背景に垣間見えるのは、未婚男女の「いい人に出会いたい」「結婚したい」という切実な思い。婚活というと、男性より女性のほうが積極的な印象もありますが、Omiaiでは「利用ユーザーの6割が男性」とのこと。
前出のアンケートによると、男女ともに結婚相手に重視する一番の条件は「物事の価値観が合う」こと。結婚生活にはお金がかかることはわかっていても、金銭的な損得勘定を超越する相手と“マッチ”することを求める気持ちは、男女ともに根強そうです。