はじめに

育休と育児時間の関係は?

カナダのケベック州で行われた育休改革の結果を分析した研究※2は、父親の家事・育児時間を調べることで、お父さんが育休取得をきっかけに、その後も熱心に家事・育児に関わるようになるのかどうかを検証しています。

ケベック州は、2006年に育休改革を行い、お父さんだけが取ることのできる5週間の育休を用意しました。その他にも、給付金が引き上げられたり、育休を利用できる条件が緩められたりしました。

この研究は、育休改革前後で人々の行動がどう変化したかに着目しています。分析によると、お父さんの育休取得率は改革前には21パーセントでしたが、改革後には75パーセントと大幅に上昇しています。これにともない、平均育休期間も2週間から5週間へと長くなっています。

研究では、育休取得後1~3年の期間を対象に、お父さんの子育て時間と家事時間を調べ、育休取得でこれらの時間がどう変化したのか検証しています。育休改革前には、お父さんは1日あたり平均で、およそ1時間半を子育てに費やしていました。育休改革後には、20分ほど子育て時間が増え、1日あたりおよそ1時間50分を子育てに費やすようになったそうです。また、お父さんの家事時間は1日あたり平均1時間10分から15分伸びて、1時間25分になりました。ケベック州では、育休取得をきっかけに、お父さんたちの子育てと家事の時間が増えたようです。

1カ月ほどの育休が、その後のお父さんのライフスタイルを少なからず変えてしまうというのは興味深い結果です。日本でも、育休を取るお父さんが増えたら、「イクメン」化が進むのでしょうか。

拙著『「家族の幸せ」の経済学』の第4章では「イクメンの経済学」と題して、男性の育休取得を詳しく取り上げています。本稿で取り上げた話題に加え、なぜ男性は育休を取らないのか、どうすれば取るようになるのか、夫が育休を取ると夫婦の絆は深まるのかといった疑問に対し、最新の経済学研究から得られた知見を紹介しています。

この他にも、「保育園は、母親の「幸福度」を高める」、「保育園は、子どもの「攻撃性」を減少させる」、「母乳育児の「知能」「肥満」への効果はない」、「日本の低出生体重児の数は世界3位」といった科学的研究の成果をもとに、結婚、出産、子育てにまつわる事柄について、家族がより幸せになるためのヒントを紹介していますので、ぜひご覧になって下さい。

「家族の幸せ」の経済学 山口慎太郎 著

「家族の幸せ」の経済学
結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」から得られた知見を紹介。

参照
※1 Rege M, Solli IF. The Impact of Paternity Leave on Fathers' Future Earnings. Demography. 2013;50(6):2255-2277. doi:10.1007/s13524-013-0233-1

※2 Patnaik A. Reserving Time for Daddy: The Consequences of Fathers' Quotas. J Labor Econ. 2019;(October 2019).

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