はじめに

結婚相談所に登録しつつも、なかなか「いい相手がいない」という女性から「私は高望みなんでしょうか?」と相談されたことがある相談員の方は結構多いと思います。

では「相手への希望は一体どういう条件ですか」と問い返してみると、「年収400万」「年収500万」「年収600万」が条件の中に入っているケースが少なからずあります。

この年収について高すぎるから見直した方がいい、と提案すると「え、これで高額なんでしょうか?」という回答となるのが一般的なケースです。

それに対して「どうして高額と思わないのか」と問うと「私のお父さんはこれくらいあるので」「私の職場はこれくらいなので」そして、極めつきは「私はこれくらいあるので」、その年収が「普通だと思っていました」との回答が返ってきます。

結果的に彼女たちには「いい相手がいない」わけですから、結果論からみても条件変更が検討されるはずなのですが、そもそも論として、彼女たちの年収条件がどの程度の確率で発生するのかということを、今回の「結婚難民の羅針盤」では最新データをもとにみてみたいと思います。


400万円という「ふつう」の発生確率

厚生労働省は毎年「国民生活基礎調査」という調査を実施しています。昭和61年(1986年)に始まった歴史ある調査で、保健、医療、福祉、年金、所得など、国民生活の基礎的事項の政策を策定するために調査しています。

今回は、この調査の2018年最新版の結果の中から「所得金額階級別世帯数の相対度数分布」のグラフをご紹介します。

「何をいっているかわからない……」という方のために簡単に解説すると、世帯所得が○円ぐらいの世帯が、一体どれくらいの割合いるのか、を示す分布表になります。

図表1

ダイバーシティとはまだまだ程遠く「一極集中が大好き」な日本人。平均所得が552万円という数字だけをみて「ほら、500万円が普通よ!」という発想をしてしまいがちです。本当にそうでしょうか。

まず、グラフからは900万円以上の世帯がおよそ16%あることがわかります。しかし、ここで注意したいのは、これは個人所得ではなく「世帯」所得の分布表ですので、1人で900万円以上稼ぐ人が6人に1人くらいはいる、という読み方をしてはいけません。

世帯所得が600万円以上は、およそ34%です。しかしこれも「世帯」所得ですので、実際に600万円以上所得がある世帯は、「男女合わせて年齢を無視してみても、やっと3世帯に1世帯程度」ということになります。

では大きく妥協して、400万円以上ではどうでしょうか。

ようやく53%ほどとなりますが、これも個人所得ではなく、またもや男女/年齢を無視しての割合です。世帯合計所得ですので、実際は個人で400万円稼ぐ人が半分いるわけではなく、しかもそのうち女性ではなく男性で、既婚ではなく未婚で(30代前半になると男性の半分が既婚者)、高齢者ではなく自分の年齢に近い人で(男女の年の差が3歳以内の初婚同士の成婚が7割)、となると、限りなく少ないことが直感的にもわかると思います。

2,000万円もある世帯が100世帯に1世帯はいるのか、と思ってみても、高齢化を反映して、この2018年調査の49%の世帯に65歳以上の高齢者が含まれているため、高所得世帯は会社経営者などの老人が含まれているのかもしれない、という考え方も可能です。

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