はじめに

ことごとく意見が食い違って

アキエさんは、旧来の結婚式にこだわるつもりがありませんでした。親たちと顔合わせをして、あとは友人などを集めて会費制のパーティを開いて終わり。結婚式にお金をかけるより、今後の結婚生活のためにお金を使いたいと思っていたのです。

「ところが彼は、式場で結婚式を挙げたいと言う。お金がかかると私が言うと、お金は親が出す、と。

いい年して親に出してもらうのはイヤだと私は言いました。『いいんだよ、アキエが嫁に来てくれれば親は何でもするんだから』という彼の言葉には、疑問符つきまくりでした。そもそも、私は『彼の家に嫁に行く』意識はない。同居はしない。親の世話になるつもりもない。すると彼は『でもオレは長男だし、いつかは同居してもらわないと』って。決定的だったのは、『実は今、家を新たに建ててるんだよね、オレのローンで』。私は固まりましたよ。そんなこともっと早く言ってよって思った」

彼がローンを組んでいるなら、新婚生活はその家で送らざるを得ない。アキエさんも仕事を続けるつもりだったが、ふたりの収入からローンと家賃、両方出すのはきつすぎる。

「つきあっているとき、彼はほとんど親の話はしなかったし、家を新築していることも話さなかった。それでいてプロポーズするというのは、周りを全部固めておいて、私が同居せざるを得ない状況を作っていたのではないか。そう思いました。そもそも、結婚前にローンを組んで親の家を新築するって、どういうつもりなのか……」

よく話し合ったが、彼に悪気はなかったようだ。どうせ住むなら親の持ち家を新しくすればそれでいい、結婚すれば一緒に住むのが当然だとも考えていたようです。彼も彼の両親も、“長男はそういうもの”と思い込んでいるのです。

「実は私はひとりっ子。私にも親がいるんだよと彼に言いました。すると彼は、『でも結婚するんだから、オレの嫁でしょ』って。そういう考えの人だと思っていなかったので衝撃でしたね」

結婚を通して初めて見えた思考の違い

女性を下に見るようなタイプではありませんでした。個人的にバカにされたこともありません。でも、「結婚」に関してだけは旧態依然とした思考をもち、それを疑問に感じたこともないのです。こういう男性は、今の時代にも決して少なくはありません。

「結局、私から結婚はなしにしてほしいと言いました。プロポーズから半年後でしたね。つきあっているときは楽しかったのに、プロポーズされてからはずっと苦痛だった。彼は何が不満なのかわからないって不思議そうな顔をしていました」

あれから1年半あまり。彼のことが好きだったからつらかったとアキエさんは言います。ただ、今、冷静に考えると、あれほどまでに基本的な価値観が違うのだから、一緒に生活していたらもっと傷が深くなったはず。婚約破棄してよかったと彼女は笑顔を見せました。

この記事の感想を教えてください。