はじめに

男性ホルモン「テストステロン」は、長寿など身体への影響はもちろん、「やる気」といった精神の健康に非常に強く影響を与えています。実際、うつ病と判断された人の7割にテストステロン値の低下が見られます。男性更年期に関する専門家である順天堂大学泌尿器科の堀江重郎教授に、(前編)に引き続き、さらに具体的に「なぜテストステロンは減少するのか」「どうすれば高く維持できるのか」を伺います。


テストステロン値は年齢では下がらない?

テストステロンはどのように、また、なぜ減るのでしょうか。統計的には、とくに男性はおおよそ40代くらいから下がり始めると出ています。しかし、最近では、テストステロンの減少は、加齢より「社会との関わり」やそれに伴う生活習慣がより大きく関係していると考えられています。

「平均すると、20代30代は確かに一番高い値になります。また、病気をするとテストステロン値は下がる。一方で、80歳でも20歳の若者より分泌量が多い人もいる。どういう人かというと、仕事をするなり、ボランティア活動するなり、“社会と接点を持っている人”。集団や社会に対して自分を表現する。それができている人は年齢に関係なく、テストステロン値が高い水準で維持されています」(堀江教授)

逆にいうと、定年で仕事を辞めて第一線から離れたりした時だけではなく、自己表現できず、社会に対して自己効力感や自己有用感(自分が人の役に立っていると思える感覚)が下がるようなストレスがあると、年齢に関わらず、テストステロン値は下がるということです。「個別にはLOH症候群は、早い人で30代で発症することもある」といいます。

また、筋肉でテストステロンは作られるので、テストステロン値の維持に適度な運動は必要ですが、男性の場合、運動強度が高いと逆にテストステロンが減るといったことも判明し、例えば、アスリートが調子を崩したり、怪我をする時、テストステロン値の低下が関係しているなどです。

その一方で、面白いことに、女性の場合、テストステロンの見かけの量は男性の5~10%と少ないのですが、65歳以上になると、実際に働いているテストステロンは、男性に近づいていきます。俗に、高齢者は女性のほうが元気で長生きだなどとよく言われますが、こうしたテストステロンの特性から考えれば、それも不思議ではありません。

「女性ホルモンのエストロゲンを補充する役割がテストステロンにはあるので、女性にとってテストステロンの影響が強くなるのは、閉経後が多い。閉経後は女性ホルモンが減っていきますが、テストステロンの量は大きくは変わりません。その結果、社会貢献活動をしたり、(子供が既に自立していたりなどもあって)より積極的に友人と食事や旅行に出掛けたり、以前より活発になる」(堀江教授)というわけです。

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