はじめに

他人の存在でテストステロン値は上がる

実際にテストステロン値の低下が疑われる場合、どうすれば回復できるのでしょうか。まずは、「日頃から自分を主張する、決断をくだす、趣味の集まりでもいいし、週に一度でもいいので、自分が認められ、主張できる場所をもつこと」と堀江教授は言います。

また、おもに以下のようなことが有効と考えられています。

 
テストステロン値を上げるキーワード
運動適度な運動をする(筋肉量を増やす)
仲間 仲間を大切にする(自分を認めてくれる人と会う)
チャレンジ 新しいことをする、習い事をする(海馬への刺激)
睡眠 夜更かしをしない、良い睡眠を取る
競争 競うことで自分を高める

ほかにも意外なことに、「姿勢をよくする」「抹茶を飲む」などにも効果が報告されています。

しかし、こうしたテストステロンを増やす飲み物や食べものは効果はあるものの、「家族や仲間と一緒に食べることがより大事」と堀江教授は指摘します。なぜなら、「他人の存在が、テストステロン値に最も影響を与えるから」です。

「テストステロンを増やす食事はいろいろとありますが、毎日そればっかり食べるわけにもいきません。テストステロンとは、つまりは、人との距離のホルモン。結局、自己表現して、それを評価してくれる人がいるとテストステロン値は上がる。だから、人が集まりやすい機会を作るという意味で、ただ食べるのではなく、友人と食事することがより効果的なのです」

ある年齢になると同窓会に出るようになったり、女子会が盛んなのも、それが最もテストステロンを上げるから。友達ではなく、利害関係のある相手だとストレスがあるので、利害関係のないところで切磋琢磨するのがテストステロン値をあげるのに役立つといいます。

漢方やホルモンの補充療法などのより直接的な方法もあります。その場合は、泌尿器科などでテストステロン値を調べ、処方してもらいます。女性も更年期以降に意欲がなくなってきた場合はテストステロンを補充する方法をとることがあります。しかし、女性の場合、テストステロン値があまり高いのは悪く働くことがあるので慎重さも必要です。

「女性は、テストステロン値が高すぎると糖尿病になるリスクが上がる(男性は逆に糖尿病になりにくくなる)」(堀江教授)。男性の場合は、女性ホルモンのエストロゲン値が高すぎると炎症を起こしやすく、心筋梗塞になりやすいと言われますが、それと似ています。

また、女性は何歳になっても体型を気にしますが、「女性の場合、基本的にはテストステロンは脂肪で多く作る。だから、女性はちょっと小太りだったり、ふくよかで筋肉のある人の方が健康で肌つやもいい」(堀江教授)


特に、具体的な病気や原因が見つからないのに、元気がない。そんな場合は、テストステロン値を調べてみるといいかもしれません。

取材協力

堀江 重郎(ほりえ・しげお)

順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科外科教授。日本泌尿器科学会指導医。日本Men's Health医学会理事長。1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得し、帝京大学医学部泌尿器科主任教授などを経て、2012年より現職。日本初の男性外来であるメンズヘルス外来を開設した。2012年より現職。著書に『うつかな?と思ったら、男性更年期を疑いなさい』(東洋経済新報社)『ホルモン力が人生を変える』(小学館101新書)、『ヤル気がでる!最強の男性医療』(文春新書)など。

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