はじめに

トランプ・ツイートは無視して問題ない?

数本の論文の中でも「トランプ氏は、市場がすでに株価に織り込んでいる内容を反復しているだけである」という記述が目立ちます。効率的市場仮説の立場から考えると、トランプ氏のツイートで言及されている情報自体はほとんどすでに世の中に出回っており、長期的な市場の先行きを決定するものではないということになります。

このように考えれば、トランプ氏が発したツイートの影響力が短命に終わることも説得的であるといえるでしょう。

これらの有力な立場からすると、トランプ氏のツイートが市場に影響与える期間は、かろうじて非常に短期的な取引で有効となる可能性があります。

もし、短期取引を行う投資家の場合、トランプ大統領の発言をどうしても投資判断に使うのであれば、逆張りの投資方法が有効なのかもしれません。トランプ氏のツイートによる株価の影響はツイート時に集中し、その影響が徐々に打ち消されていく傾向にあります。したがって、ツイートが示唆する方向感が長時間維持されるとは考えにくいでしょう。

中長期目線の投資家がとるべき行動

しかし、これまでにご紹介した統計的な結果を知らない投資家の多くは、トランプ氏の発言を必要以上に重要視してしまうかもしれません。つまり、市場の過剰反応を逆手にとった取引を行うことが、短期目線の個人投資家にとっては有効なのかもしれません。

たとえば、トランプ大統領が中国市場に対してネガティブなツイートを行った場合、即座に人民元や中国関連株を売却するのではなく、ツイートに基づく値動きがいったん落ち着き、反発を示した段階で買いを入れるというような戦略です。

結局のところ、中長期目線の投資家にとってノイズ程度の認識で問題はないでしょう。中長期の投資判断を行うにあたっては、各種の経済指標や企業の業績といったファンダメンタルズ分析を行うことが有効です。

もし直近のトランプ氏のツイートで長期目線の株を売却しようか悩んでいる場合は、本当にその判断が合理的なのか、一度立ち止まって考えてはいかがでしょうか。トランプ氏のツイートだけを根拠にして、向こう数年の景気が悪くなる、または良くなるといった投資判断はできないのです。

<文:Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古田拓也>

この記事の感想を教えてください。