はじめに

ヤクルト本社が9月10日、株主優待の内容を一部変更するリリースを出しました。この変更、もしかすると、セ・リーグを中心とした全国のプロ野球ファンに関係が出てくるかもしれません。

なぜ、そんな事態になっているのか。まずは今回の優待内容の一部変更について、少し詳しく見てみることにします。


一時的な資金負担でゲットできたタダ券

個人投資家にとって、株主優待は配当と並ぶ重要な指標です。優待だけで生活費を賄う人がいろいろなメディアに登場している場面を目にしたことのある人も、多いのではないでしょうか。

ヤクルト本社は年に2回、優待を出しています。3月末時点の株主に対して6月に出している「3月優待」と、9月末の株主に対して翌年3月に出している「9月優待」です。前者はヤクルト製品の詰め合わせ、後者は明治神宮野球場で開催される東京ヤクルトスワローズのチケットとの引替権利証。今回、変更対象となっているのは9月優待のほうです。

実はこの9月優待、神宮球場に通う首都圏在住の熱狂的なプロ野球ファンにとって、かつては必須アイテムでした。なぜ「かつて」なのかは後述するとして、つまり優待を「投資した結果、付いてくるリターン」としてとらえているのではなく、チケットをタダで入手することを目的に投資をするという行動様式だったのです。

3月優待が権利確定の3ヵ月後にあたる6月には送られてくるのに対し、9月優待は翌シーズンのチケットが発売になる時点までに届けば良いので、送られてくるのは翌年3月。逆に言えば、翌シーズンのチケット狙いであるのなら、前年の9月末時点で株主になっておく必要があります。

同社は、優待対象に連続保有期間の縛りをかけていません。配当も年2回出していますので、3月末時点の株主に対して支払われる配当もいらない、3月優待もいらないというのなら、9月末時点で株主としての権利を確定させたら株を売却し、また翌年9月末の権利確定に間に合うように株を買えば、優待も配当ももらえて、資金が寝るのはほんの一時で済みます。

恩恵はスワローズファン以外にもあった

この優待を必須アイテムとしていたのは、スワローズファンだけではありません。ビジター球団のファンも同様です。

外野スタンドに通う熱狂的なファンは、遠征先に追いかけていく分も含め、年間に50試合近く観戦する人もまれではありません。それだけお金もかかりますから、1枚でも多くタダ券が欲しいわけです。

スワローズの対戦相手であるセ・リーグ5球団のファンの中で、ジャイアンツのファンは東京ドーム、ベイスターズのファンは横浜スタジアムと、それぞれホーム球場で見たいというマインドが強いので、さほど“神宮通い”に熱心ではありません。ドラゴンズファンはそもそもあまり人数が多くありません。

これに対し、カープとタイガースのファンは、ホーム球場が離れているうえ、熱狂的な人も多く、知恵を働かせる人の数もおのずと多くなります。

スワローズの観客動員数

先行販売狙いで、スワローズファンではないのにスワローズファンクラブに入会するのは基本中の基本。さらに踏み込む人は、ヤクルト本社の株式を買うところまでやっていたわけです。

そもそも神宮球場はビジター・ファーストな球場です。他の球場はビジターファンが応援できるエリアがかなり限定されていますが、神宮はかなりオープンなので、ビジターファンにとって極めて居心地の良い球場なのです。

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