はじめに

3年前の全席指定導入で“使えない優待”に

では、なぜ過去形なのか。それは、スワローズが2016年シーズンから、外野席に全席指定を導入したことが原因です。

2015年シーズンまで、神宮の外野はグラウンドに近い下半分は指定席でしたが、上半分は自由席でした。しかし、1人で何席も占拠するファンに対する不満が別のファンから出たため、混雑が予想されるゲームについては全席指定とするようになりました。

しかし、優待で送られてくるのは「外野自由席と引き替えができる株主優待証」です。これを、観戦したいゲームの開催日当日の試合開始3時間前以降に球場のチケット販売窓口へ持っていくと、外野自由席のチケットがもらえるわけです。

引き替え可能な枚数は100株以上1,000株未満の株主は4枚、1,000株以上の株主は24枚。1度に行使できるのは4枚分までです。あくまで外野自由席のチケットに交換するというものなので、全席指定のゲームでは使えません。

全席指定のゲームは年々増え、今シーズンは神宮開催67ゲーム中、実に53ゲームが全席指定。優待が使えるゲームは14ゲームだけで、その14ゲームの内訳も、ベイスターズ戦が4ゲーム、ジャイアンツ戦と交流戦のソフトバンク戦が3ゲームずつ、阪神戦、中日戦、交流戦のロッテ戦、オリックス戦が1試合ずつで、カープ戦はゼロ。

つまり、カープファンにとってはまったく意味のない優待になり、カープ以外のビジター球団のファンにとっても、ほぼ使えないものになってしまったのです。

今回の変更でどう変わる?

今回の変更点は4点。まず、優待証に代わって引き替え申し込み用のIDとパスワードの交付になります。2点目が、全席指定ゲームでも使えるようになるという点。3点目が、ゲーム開催当日ではなく、それ以前に引き替えが可能になる点。4点目が、球場窓口ではなく、Webサイトやコンビニの発券機での引き替えが可能になるという点です。

全席指定ゲームで使えるのは朗報なのですが、実は「特定試合を除く」というただし書き付き。「特定試合」とは混雑が予想されるゲームで、来年2月頃、どの試合が特定試合になるのかが発表されます。

カープ戦は毎試合大混雑ですから、結局、来シーズン以降もカープ戦では優待は使えない状態が続く可能性があります。さらに、来シーズンは東京オリンピックが開催されるため、日程や開催場所が変則的になり、詳しいことは来年2月までわかりません。

それでも、9月末時点で株主になっていないと優待の対象にはなりません。ヤクルト本社株は1単元買うのに60万円前後かかります。業績が好調で、現在の株価は10年前の3.6倍です。

ヤクルト本社の業績

一時的とはいえ、個人には気軽に手が出せる金額ではありません。今回の変更をもってしても、9月優待狙いの買いが膨らむ期待は薄そうです。

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