はじめに

9月20日に発売された「iPhone 11」シリーズ。前シリーズから実装されている顔認証機能「Face ID」に加え、超広角カメラや新型チップ「U1」などを搭載し、一部の専門家からは「旧型と11以降でiPhoneの歴史が分かれる」という声も聞かれます。

そんなiPhone 11と同様の変化を業界にもたらすかもしれない新型ATMが、iPhone 11シリーズに先立つこと1週間ほど前に発表されました。最大の特徴は、顔認証機能とQRコードの読み取り機能を搭載している点。これらの機能を搭載することで、ATMの用途が飛躍的に高まる可能性を秘めているのです。


既存の無人契約機と何が違う?

セブン銀行が9月12日にお披露目した新型ATM。同行のATMは全国で約2万4,000台が稼働していますが、これから順次、今のものから入れ替えを進め、来年夏の東京オリンピック開催までには都内全域、2024年度までに全部の入れ替えを完了する予定です。

新型ATM最大の目玉は顔認証機能とQRコード読み取り機能。NECの認証技術を使ったもので、口座開設に必要な本人確認作業が端末でできるようになるので、転送不要郵便や本人限定受取郵便を使う現在の方法に比べ、格段に効率化できるというわけです。

サブディスプレイ
サブディスプレイに本人確認書類の読み取りなど各種機能を集約

今でも消費者金融やクレジットカードの無人契約機はありますが、あれは完全に無人とは言えません。

1993年に当時最大手だった消費者金融会社・武富士が始めたもので、当初は機械の裏に人が座っていました。現在は、消費者金融会社は必要書類の画像や申込者の映像を審査する人がいる場所に回線で飛ばして審査しています。

三菱UFJ銀行も一部のATMコーナーに設置されているテレビ窓口で口座開設の手続きをすることができますが、オペレーターと電話で話しながら手続きをしますので、あくまで有人のサービスです。

セブン銀行自身の口座開設手続きの実証実験を10月から開始するそうで、実験結果を踏まえ、近い将来、提携先にもサービスを拡大するはずです。店舗数を減らしたいメガバンクにとってもメリットは大きいはずですし、首都圏の店舗数が少ない地方銀行にはかなりのビジネスチャンスが生まれるはずです。

コンビニATMが増え続けるワケ

自分が口座を持っている銀行のATMコーナーが手短なところになくても、セブン-イレブンは行動半径内のどこかにある、という方は多いでしょう。コンビニのATMは手数料こそかかりますが、急遽現金を下ろしたくなった時、大変ありがたい存在です。

しかし、ATMは莫大な運営費用がかかるので、今のように低金利の状況で収益力が低下傾向にある銀行としては、できるだけ数を減らしたい存在でもあります。有人店舗が統廃合される場合はもちろん、ビルの建て替えを機にATMコーナーが姿を消す例も増えています。メガバンク同士がATMを共通化しようとする動きまで出てきました。

こうした状況下にあって、唯一増加し続けているのがコンビニATM。セブン銀行のほか、ローソン銀行やイオン銀行、イーネットなどがありますが、セブン銀行が他を圧倒しています。

コンビニATMにとって、直接の顧客はATMを利用する人たちではありません。利用した人が口座を開いている金融機関がコンビニATMに入出金業務を委託し、委託手数料をコンビニATMの運営会社に支払っているからです。

ちなみに、ATMを自ら運営するには銀行免許が必要なので、セブン銀行もイオン銀行もローソン銀行も銀行免許を取得しています。イーネットは銀行免許を取得しておらず、銀行からATMの運営を受託する形になっています。

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